DX先進国で注目を集める「カンバセーショナルAI」
デジタル化による業務改善などを目的にして、AIを活用した新しい取り組みに挑戦する企業が増えている。日本でもコロナ禍になってから民間企業だけでなく地方自治体などでも導入されており、一定の効果を挙げているという報告も聞くようになった。AI-OCRやチャットボットなどが定着している一方で、数年程前から耳にするようになった「カンバセーショナルAI」(対話型AI)については、よくわからないという人も多いのではないだろうか。一方で、DX先進国といわれているアメリカをはじめ、グローバルではカンバセーショナルAIを活用する企業が増えていると語るのは、Kore.ai Japanで副社長 兼 営業統括を務めている角田晴雄氏だ。
角田 晴雄(かくた はるお)氏
Kore.ai Japan 副社長 兼 営業統括
富士通に入社後、官公庁の営業を担当。独立し健康食品の会社を設立後、Appleでマーケティング、教育市場向け営業、日本HP、日本IBMで通信業向け営業、EMC、マカフィーで、製造業・流通業・サービス業向け営業の責任者を担当。また、2019年から、オートメーション・エニウェアにて、エンタープライズの営業の責任者を経て Kore.ai の日本法人の立ち上げに参画。日本における営業全体を統括。対話型AIによるDX推進を支援。
玉城 久頌(たまき ひさよし)氏
Kore.ai Japan ソリューションズエンジニアリング本部 ディレクター
日本ヒューレット・パッカード入社後、セキュリティ部門においてR&Dおよびプリセールスを担当。その後、北米に移住しIIJ Americaでクラウド、セキュリティ、テレフォニー事業を統括。日本に帰国後オートメーション・エニウェアを経て Kore.ai の日本法人の立ち上げに参画。日本・アジア太平洋地域のソリューションズエンジニアリング部門を統括。対話型AIによるコンタクトセンター改革、顧客体験、従業員体験の向上を推進。
そもそも、カンバセーショナルAIとはどのようなものなのか。厳密な定義は企業によって揺れる部分もあるとしながら、「人とAIが対話することで疑問点を解消したり、やりたかったことを代行してくれたりするようなソリューションです」と説明する。こうした、人の意図を認識するための手段といえば、機械学習をベースにしてトレーニングデータを学習させるものも多く、日本でも多くの企業から提供されてきた。
とはいえ、チャットボットとは開発目的が大きく異なることも特徴の1つだという。多くのカンバセーショナルAIは、“DXを支援するためのツール”として開発されており、欧米企業の多くが、DXにおけるビジネスパフォーマンスを向上させるためのツールとして導入を進めているという。
ここに自然言語処理のエンジンを組み合わせることで精度を高め、アメリカ市場を中心に展開を続けているのがKore.aiである。2014年に米フロリダに設立されたエンタープライズ向けのバーチャルアシスタントプラットフォームなどを提供している企業であり、2020年10月に日本法人が設立されている。同社では、カンバセーショナルAI構築のためのプラットフォーム上に業態業種別のトレーニング済みのAIを実装し、ソリューションとして提供しているという。
たとえば、銀行業における複雑な業務をAIが音声で代理応答できるものであったり、社内の業務支援として各部門から問い合わせの多い部分をAIが受け持てたりするようなものがあるという。また、最近よく見かけるようになった、AIがチャットや音声を受けて、複雑なトラブルシューティングの場合にオペレーターへとつなぐような仕組みに関しても、「SmartAssist」サービスとして日本でも提供している。
とはいえ、日本ではカンバセーショナルAIの導入は進んでいないのが現状だ。そこには、DXの遅れが顕著に表れているとして角田氏は、「欧米と比べると日本企業のCIOやCOOの方が率先してDXを進められておらず、DXについて話を聞いていても多くの企業で『まだこれからどうするか悩んでいる』という回答が返ってきます。一方、欧米企業ではいち早くSaaSの活用がはじまるなど、競合他社に対する優位性を少しでも確保するために新たなソリューションを率先して採用する動きも加速しており、カンバセーショナルAIの導入も進んでいます」と指摘する。コロナ禍より前に導入に踏み切っている企業も多く、既に一定の成果をあげている企業も少なくないという。