人流データ活用でアフターコロナの観光戦略を考える
コロナ禍の報道の中で、「人流データ」という言葉と「Agoop」という社名に認知度が上がった。Agoopは位置情報やIoTビッグデータを活用したソリューションを提供する、ソフトバンクグループの企業。当初、ソフトバンクのモバイルユーザーの繋がりやすさ改善や基地局の課題を解決する企業として、2009年に設立されたか現在では、蓄積した「流動人口データ」を活用するテクノロジーで、多方面のビジネス分野でのソリューションを提供している。
沖縄で開催された地域社会からのDXをテーマにしたイベント「ResorTech OKINAWA 2021」では、同社の若谷巧氏よる講演と、リクルートライフスタイル沖縄 有木真理氏、JTB沖縄の杉本健次氏による人流データ活用に関するセッションが行なわれた。
冒頭の講演ではまず、Agoop 若谷氏が人流データ活用による分析の内容を紹介した。
はじめに若谷氏は、Agoopが収集する位置情報による人流データが、利用者のプライバシーを重視していることを強調。「取得についての事前承認事前承諾」「第三者に対する情報提供」「個人情報保護について」の項目の承諾を得ている。また同社以外の提携アプリからもデータを収集しているが、その場合も同様の許諾を得ているという。
その上で、どれぐらい細かく移動情報が取れているかの例として、原宿駅と表参道駅の2拠点での人の移動の高精細な画面を表示した。裏道に至るまで細かく人の移動が確認できる。位置だけではなく、スマホのセンサー情報を活用することで、移動の方向、高度、気圧情報も把握できている。
さらに同社はエクスペリアン社と提携で、ジオデモセグメンテーションツール「Mosaic」との連携による分析も提供している。Mosaicから提供されるデータは人々の年収や家族構成、所有する車種、飲酒や喫煙といった細かいデータまでが含まれており、Agoopの流動人口データとかけあわせることで高精度な商圏分析や需要予測が可能となる。若谷氏はその活用例として世田谷区のショッピングセンターの結果をあげた。従来の商圏分析では私鉄沿線地として、家族構成1〜3人で、比較的年齢が若く年収も高い層がショッピングモールとして想定されていた。しかし実際にはその地域の住民よりも、もう少し年収の低い「一般家庭」層が移動していることがわかった。そこで、高級店中心から一般の家庭向けのテナント中心に転換したという。
位置情報の種類は、「基地局位置情報」と「端末の位置情報」の2つがある。「基地局の位置情報」はAgoopの場合、ソフトバンクの基地局で捉えられる情報で、人流を「メッシュ」として捉える。「端末の位置情報」は人流を「点(緯度経度)」で把握するものだ。これはアプリによって収集されるためソフトバンク以外のキャリアも含まれ、端末に装備される各種センサーの情報も取得される。
こうしたデータの分析がもたらすビジネスへのインパクトは大きく、最近ではコロナ後の需要予測のための問い合わせが多いという。「競合店にどのように顧客を奪われているか」「過去のデータから今後どのぐらいの需要が予測できるか」などだ。また端末位置情報のセンサーによる移動方向やスピード、気圧などの情報が、パンデミックや災害時などで役立つことも紹介した。