日本企業に特化したサービスを推進 生産性の向上に貢献していきたい
――Okta Japanの体制が整っていく中で、日立ソリューションズではどのような取り組みを予定していますか。
松本氏:まずは、2022年2月から日本のデータセンターでのサービス提供が開始されたことをとても嬉しく思っています。お客様のニーズも非常に高く、Oktaを販売し始めた当時から日立ソリューションズにも、日本リージョンの設置を求める声がたくさん届いていました。
また、Oktaは日本企業と相性が良いと感じています。日本企業はシステムの可用性に対して非常に高いレベルを求める傾向があるため、「止まらない」という点に非常に大きな価値があるのです。
多くの日本企業は専門職でなく総合職として従業員を雇用しているため、所属部署を兼務していたり、出向後も出向元に籍が残ったりするなどID管理が複雑になりがちです。しかし、前述したようにOktaは複雑なID管理もあっさりこなします。
このようにOktaは日本のお客様向けのサービスとして適している一方で、完全にフィットしていない部分もあります。そこを当社が担いたいと考えているのです。
日本のお客様によく言われることの一つに、端末制御があります。会社で支給している端末だけにシステムを使わせたいということです。しかし、アメリカではBYOD(Bring Your Own Device:自分のデバイスを利用すること)が浸透しているため、Oktaの端末関連の機能には、BYODで高いパフォーマンスを発揮するものも少なくありません。
そこで日立ソリューションズでは、個人所有の端末やセキュリティ対策が十分ではない端末からのアクセスを制御し、会社支給端末からのみ社内のシステムや情報にアクセスを許可できる「秘文 統合エンドポイント管理サービス」というソリューションを展開し、これをOktaと連携しています。
さらに、現在Oktaがサポートしている認証の分野は、従業員向け・BtoB・BtoCと大きく三つありますが、今後はBtoCのCustomer Identityを日本でより浸透させていきたいと考えています。
先ほど渡邉さんがおっしゃった通り、サービスにおけるユーザー認証は何か革新的な機能が必要というわけではなく、使いやすくセキュアで安定したサービスであることが重要です。そのため高品質なサービスを使った方がいいのですが、日本ではまだそうした考え方が浸透しておらず、認証部分も自分たちで作ろうとする文化があるのです。まずは、そこを変えていきたいと思っています。
――アイデンティティ管理ソリューションを提供するOktaとしては、どのような提案を日本企業にしていきたいと考えていますか。
高橋氏:新型コロナウイルス感染症によってIT関連ビジネスが加速していることに加えて、人材の流動化も進んでいます。今まで以上に管理しなければならないIDに関するシステムが増えていく一方で、そのメンテナンスを担う技術者は不足しています。特にグループ内の異動や新たな従業員の採用などが増えてくると、今は何とか人手で賄えていても、やがて回せなくなることが予想されます。
そこを見据えたときに、ID管理をコストではなく、次のビジネスをきちんと回していくための先行投資だと考えていただきたいです。Oktaは単なるID管理だけではなく、セキュリティまで担保できるソリューションですので、そのあたりを含めてご検討いただければと思います。
渡邉氏:日本のお客様に向けた取り組みの一つとしてもう一つ、「Okta Integration Network(OIN)」があります。事前に統合されたアプリケーションがグローバルで7,200以上(2022年1月取材時点)もあるため、担当者が数クリックでシングルサインオンの設定ができたり、人事システムとの連携によるプロビジョニングの自動化ができたりします。
日本で営業を開始してから、日本のクラウドベンダーや独立系のソフトウェアベンダーにもOINに参加いただけるよう推進しています。日本企業のクラウドサービスとの連携テンプレートも増えており、シングルサインオン用途のSAML(Security Assertion Markup Language)連携だけでなく、プロビジョニングの自動化を実現するためのSCIM(System for Cross-domain Identity Management)連携も増えつつあります。
Oktaを使っていただくと、働く環境のユーザーエクスペリエンスが高まり働きやすくなる。それだけでなく、ID管理を担うIT部門の管理工数も削減でき、より戦略的なIT投資にシフトできるのです。さらに、Customer Identityも活用いただくことで、コアサービス部分に多くのリソースを投入できるようになり、市場投入までのサイクルを短くすることもできます。
今後も引き続き日本企業にOktaを提案することによって生産性向上に貢献し、デジタルサービスの立ち上げやDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進に貢献していきます。