デジタル・ナレッジ・マネジメントで情報を一元管理
Yextが提供しているデジタル・ナレッジ・マネジメントとは、オンライン上にある様々な自社の情報を、一元管理することを指す。
たとえば店舗のオープン時間が変更になれば、自社のWebサイトの表示は新しい内容に変更するだろう。しかしGoogleなどで検索すれば、店舗に関する情報のURLが数多くヒットし、それぞれのリンク先には異なるオープン時間の情報が掲載されているかもしれない。このような検索した結果の情報がばらばらで不正確になってしまう課題を解決するため、新たなナレッジ管理の仕組みをYextでは提供している。
Yextのデジタル・ナレッジ・マネジメントのサービスにおいて、重要な役割を果たしているのが、ナレッジグラフ(Knowledge Graph)と呼ばれる検索に最適化したデータベースだ。ナレッジグラフは、インターネット上にある様々な情報源から収集した情報を用いて、検索エンジンの検索結果を拡張するために使用されるデータベース(知識ベース)。Yextのナレッジグラフに企業の公式情報を蓄積し、外部の検索サービスに渡すことで情報を一元的に管理できる。
ナレッジグラフには人物や作品、場所などあらゆる物事についての事実(エンティティ)が含まれ、各情報の関係性や属性を認識、把握できる。Googleもナレッジグラフに様々なデータを収集し、最適化した検索結果として表示している。
PCのブラウザなどでGoogleに検索ワードを入れ検索した際に、右側に表示されるナレッジパネルなどの内容が、ナレッジグラフで処理された結果だ。検索結果としてURLリンクではなく、検索するユーザーが欲しい情報をダイレクトに提供できるのがナレッジグラフを使った検索なのだ。
AI検索の会社へと変貌を遂げたYext
Yextではナレッジグラフを自社で開発し、デジタル・ナレッジ・マネジメントのサービスのために利用してきた。その後Yextはナレッジグラフの仕組みがあるのならば、これに検索機能を組み合わせることで、企業向けのGoogleのような検索エンジンが提供できると考える。そこで4年ほど前から、ナレッジグラフを活用する企業向け検索エンジンの開発に取り組み、2019年にYext Answersを発表した。
Yext Answersの提供以降「Yextはデジタル・ナレッジ・マネジメントの会社から、サーチカンパニー、検索クラウドプラットフォームの会社になりました。そして2021年5月頃からは、さらにAI検索の会社に変革しています」と言うのは、Yextでマーケティング部の部長を務める清水 真理氏だ。AI検索と謳っているのは、複数のAI検索アルゴリズムを用いて、AIの活用部分を強化しているからだ。
ではYextは具体的にAI技術で何をしているのか。「通常のデータベースのエンジンでは、データ同士の関係や属性までは理解できません。数字の羅列があっても、それが電話番号なのかクレジットカード番号なのかはわからないのです。Yextでは、ナレッジグラフにAIを組み合わせることで、AIがその数字が何かを理解できるようにしています」と清水氏は説明する。
企業のWebサイトなどの検索では、検索窓に単語を入れると検索エンジンがそのワードに一致するものをアルゴリズムで重み付けなどをし、関連性のスコアが高いものから順にURLが一覧で表示される。一方、Googleで検索すると右側のナレッジパネル部分には、検索ワードに関連した情報が構造化され表示される。
Googleと同じようなナレッジグラフがYextにはあるので、企業サイトの内部にある情報を構造化してダイレクトに提供できる。「Yext Answersを使えば、企業サイト内の検索で商品名を入れれば、その商品がどのようなものかという情報はもちろん、ビジュアル写真も表示させることができます。URLのリンクを返すのではなく、必要な情報をGoogleのナレッジパネルのように出すことができるのです」と言うのは、Yext セールスエンジニアリング部 ディレクターの笹原 健氏だ。
Yextでは元々、店舗に関する様々な情報をナレッジグラフに格納し管理してきた。さらにYext Answersでは、企業のあらゆる情報をナレッジグラフで格納・一元管理し、PCやモバイルで検索した際に、ユーザーが欲する情報をダイレクトに提供している。
「企業のWebサイトなどで数多く使われている検索の仕組みは、1999年にApache Luceneとして開発されたオープンソースソフトウェアが元になっており、1999年以降あまり進化していません。一方でGoogleの検索の仕組みはどんどん進化しています。ここに企業検索におけるギャップがあると考え、それを埋めるためにYextではAnswersをリリースしました」と清水氏は言う。