JリーグIDのデータ活用で直面した課題とは
FC町田ゼルビア(以下、ゼルビア)は町田の少年サッカーから発展したクラブだ。1977年に地元の小学生たちを選抜したトレーニングセンターからはじまり、ジュニア、ジュニアユース、ユースへと組織を伸ばし、1989年には遂に社会人のトップチームが誕生した。Jリーグでは加盟クラブに若手育成のための裾野組織を要請しているが、ゼルビアは裾野組織が起源だ。ここは他クラブと一線を画す特徴となる。
もう1つ、町田市に根付いていることも大きな特徴だ。サッカー少年を育成していた時代から「静岡の清水」のように、サッカーで有名な地域を目指していた。「ゼルビア」は町田市の樹ゼルコヴァ(ケヤキ)と花サルビアからの造語であり、マスコットは町田市の鳥カワセミがモチーフ、ロゴマークに配置されるなど、町田と深いつながりがある。
ゼルビアでデータ活用に携わっているのはマーケティング部長 田口智基氏とマーケティング部コミュニケーションマーケティング課 近藤圭氏。二人ともファンクラブや地域振興施策など幅広く担当しており、データサイエンティストやITプロフェッショナルの出身ではない。
クラブが目指すのはより多くのファンを獲得し、試合来場者を増やすこと。かねてよりデータ活用からファンサービス施策につなげたいという構想はあったものの、自力でデータベースや仕組みを構築するところで技術や費用の壁があり先送りしていた。
転機は2017年。Jリーグから各クラブへJリーグIDのデータが提供されるようになった。JリーグIDはJリーグ共通のIDで、ファンがチケットやグッズ購入に使うアカウントだ。お気に入りクラブを設定すれば、クラブの最新情報や試合速報を入手できるようになっている。現在は全体で150万件のアカウント登録があり、うちゼルビアをお気に入り登録しているアカウントは約2万2,000件。
各クラブはJリーグの共通プラットフォームから生データ(CSV)でダウンロードできる。Jリーグはデータ分析用にBIツールも提供しているものの、データ活用の専門家ではない二人には難易度が高く、データをどう活かせばいいのか途方に暮れてしまった。そこでデータビークルの協力を得て、データ活用に挑むことにした。