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「気づいたら“DX”できていた」 地方中小の若き経営者が建設業の未来を切り拓く

 金物の街、新潟県三条市にある「小柳建設」に注目が集まっています。同社は地元に根ざした中小企業でオーナー経営の特性を活かし、先見的な経営者のもと「建設業界DX」に取り組んでいるからです。今回おすすめするのは同社3代目社長の小柳卓蔵氏による『建設業界DX革命』(幻冬舎メディアコンサルティング)。地方中小の建設企業のDXサクセスストーリーから、DX推進のためのヒントを探ります。

アナログで属人的な業務に驚き

 小柳建設は地場に根ざした企業として1945年に創業。現在の社長で著者の小柳氏は三男坊で、元々は家業を継ぐ予定がなかったと言います。同氏は専門学校卒業後、金融業界で5年間勤務。司法試験の勉強をしていたある日、当時の社長である父から後継者予定だった長男の退職を告げられたそうです。小柳氏は、後継者が見つかる間の“中継ぎ”として家業に入ることを決意しました。

 建設業のことは何一つ知らない状態で入社。それでも前職の金融業界と比べて、あまりにもアナログで属人的な業務フローに違和感を感じたと言います。そこで、同氏は「社内の嫌われ者」になることを買って出て、「誰でも経営や営業ができるように」仕組み化することにしました。

「アメーバ経営」との出会いがDXの足掛かりに

 まずは経営を学ぶ必要があると考えた小柳氏は、京セラ創業者の稲盛和夫氏が書いた『アメーバ経営』(日本経済新聞出版)に出会います。アメーバ経営を簡単に説明すると、社内を独立採算可能な小集団組織(アメーバ)の集まりとして、アメーバそれぞれのリーダーを経営者とみなすものです。経営計画からメンバー育成までのすべてをその経営者に任せます。

 小柳氏はアメーバ経営をそのまま導入するのではなく、経営方針や理念を明確に示し、従業員と共有する必要があると考え、「経営哲学手帳」を作成。社員に配布し、まずは土壌を固めたと言います。

 それでも「昔のままがいい」という人が必ず出てきます。小柳氏はそれらに対して一切妥協せず、例外を認めることなくアメーバ経営を進めました。建設業の特性で数値化が困難な箇所もあったと言いますが、出来高管理を徹底。当初こそ“アレルギー反応”で否定的だった熟練社員も、工事を遅らせてはいけないプレッシャーと孤独感から解放されると「ずいぶんと気が楽になった」と、一気に協力的になったと言います。

 アメーバ経営では、“ガラス張り”が基本で最終的な成果が数字として出るので、健全な競争心が刺激されます。小柳氏は同社のその後のDX成功要因に、アメーバ経営で築いた「チャレンジできる風土」「部門間で矛盾しないKPI」「公平な人事制度」の3要素を挙げるほどです。

 しかしあくまで、IT化やDX推進を目的としてアメーバ経営を導入したわけではないと言います。むしろ、アメーバ経営を続けることで自然とIT化を進める必要が出てきて、DXにも取り組んだだけのことだと振り返っています。

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建設業とクラウド化は相性がいい

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この記事の著者

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

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