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大手建材会社から独立した「ジャパンホームシールド」が1年でAzure移行 成功裏にソフトバンクの伴走

Azure Expert マネージド サービス プロバイダー(MSP)活用事例

 既存システムのクラウド移行自体は、今や技術的にそれほど難しいものではないだろう。とはいえ、移行後の運用管理はオンプレミスと同じというわけにはいかない。クラウド特有の管理方法があり、クラウドに最適化していなければ思わぬところで手間がかかったり、セキュリティリスクが生じたりもする。移行後の運用管理体制も含め、いかにクラウドに最適化できるか、さらにクラウドネイティブなサービス活用に発展できるかで、クラウド利用の価値は大きく変わる。大手建材会社からの独立を機に、すべてのIT環境のクラウド移行を決めたジャパンホームシールド。いかにして短期間でのクラウド移行と、移行後の安定した運用管理を実現したのか。「Azure Expert MSP」の認定を持ち、移行および移行後の運用を支えているソフトバンクともに話を訊いた。

短期間でのクラウド移行を決断

 1990年に創業した「ジャパンホームシールド株式会社」は、地盤調査・解析や構造設計、建物検査などの事業を行っている。同社が調査・解析や設計、検査などに携わった住宅は200万棟を超えるという。豊富な実績は高度な技術力の裏付けでもあり、同社では常に新しい技術開発にも積極的に取り組み、多くの特許も取得している。

 「国内住宅の4棟に1棟は何らかの形で我々が関わっています。新しい技術を使い、安心・安全を提供するのがジャパンホームシールドの役割であり、解析専門会社として中立な第三者解析を行っているのが特長です」と言うのは、ジャパンホームシールド 改善推進部(情報システム管掌) 課長 佐藤隆一氏だ。地盤や建築物は、安全性を高めようとすれば追加工事が必要になりコストもかかる。ジャパンホームシールドには安全性を担保しながら、コストを最適化できるノウハウがあるという。

ジャパンホームシールド 改善推進部(情報システム管掌) 課長 佐藤隆一氏
ジャパンホームシールド 改善推進部(情報システム管掌) 課長 佐藤隆一氏

 ところでジャパンホームシールドは、大手建材会社の連結子会社としてビジネスを展開していたが、2020年12月にグループから独立することが発表された。2021年3月には株式譲渡が成立し、単独での事業に移行。これを契機に、大手建材会社に頼っていたITインフラも1年以内に同社単独で運用することになったという。

 新規にデータセンターを独自運用するのは、IT部門のリソースや準備する時間の面でも不可能だと判断。短期間で新たなITインフラを用意し、少ないメンバーで安定した運用をするには「クラウドしか選択肢はなかった」と佐藤氏は言う。

 クラウドプラットフォームはAWS、Microsoft Azureが候補となった。既にActive Directoryで認証基盤を構築していること、Windows Serverベースのシステム構成だったことからAzureにしたという。さらに、クラウド移行をサポートするパートナーには、通信キャリア系ベンダーを候補にした。「新たなクラウド利用では、クラウドだけでなく、ネットワークも含めて見直す必要があります。ネットワークの設計、構築には手間と時間がかかるので、そうしたノウハウを総合的に見て、キャリアにお願いすべきだと考えました」と佐藤氏。そして、Azure運用の最上位のエキスパート資格「Azure Expert MSP」の認定を受け、通信キャリアとしてネットワークも得意とするソフトバンクを移行パートナーに選んだ。

異例の“超短期”クラウド移行が始まる

 移行期限は2022年2月末。多くの時間が残されていないことから、既存の環境にはなるべく手を入れないようにしたい。そのため物理サーバーを仮想化しクラウドへ移行する方法をとることにした。ファイルサーバーなども含め、基幹系システムを中心に移行対象サーバーは20台ほど。それに「Active Directory」など新規に構築する管理サーバーも加えた計27台のサーバー、その他ロードバランサーなどのリソースがAzure上に構築する対象となった。

 また、社内業務処理で「Microsoft Access」を用いていたものがあり、これについてはクラウドにAccessの環境を丸ごと移行し、Azure Virtual Desktopを使いアクセスすることにしたという。その上でAzure上の環境にアクセスするために、ソフトバンクが提供する専用線接続サービス「ダイレクトアクセス for Microsoft Azure」を利用し、閉域網で接続しセキュリティを担保した。

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 「Azureやネットワークに関する技術的な質問をした際にも常に明確な回答が得られ、ソフトバンクなら安心できると考えました」と佐藤氏。このように、クラウドに接続するネットワークとAzure環境を統合した提案、構築、運用が可能な点がソフトバンクをパートナーに選定した最大の評価ポイントだったと振り返る。さらに、ソフトバンクが「Microsoft Azure Expert MSP」と「Microsoft Azure Networking MSP」の2つの認定を取得していることから、Microsoftとの深いパートナーシップや同社ビジネスに対する技術力がある、と判断したという。

 今回のクラウド移行では、27台のサーバーに優先順位をつけ順次移行を実施した。既存環境をそのまま移行するので、サーバー名なども変更しない。移行期間中は、前のデータセンターとAzure環境をダイレクトコネクトで接続し、同じ名前のサーバーが両方の環境に存在することになった。サーバーは、単体で動くわけではなく、必要な周辺システムも合わせて移行する必要があった。これらのコントロールは、手間のかかるものだったと佐藤氏は振り返る。

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 こうしたジャパンホームシールドの要望を受け「スケジュール優先で、柔軟な対応を心掛けました」と振り返るのは、ソフトバンク クラウドエンジニアリング本部 サービスデリバリー部 サービスデリバリー2課の大山 令生綱一郎氏だ。スケジュールを守りつつ品質も担保する。そのため、仮想サーバーの構築では、アジャイル的な手法で環境のデプロイをパターン化。自動構築しながらも外部公開のセキュリティ面には注意するなど、品質とスピードのバランスをとるための工夫もしたという。

ソフトバン

ソフトバンク クラウドエンジニアリング本部
サービスデリバリー部 サービスデリバリー2課 大山 令生綱一郎氏

 最初の6台のサーバーは基幹系システムで、移行できるタイミングは準備期間を考慮すると夏休みしかなかった。これを逃せば年末年始になるが、そのタイミングはMicrosoft 365への切り替えに充てたかった。そのため、まずは基幹系システムの移行は夏休みまでに確実に終了することが必須となる。基幹系システムはデータ量も多く、止めることも許されない。それに、事前の十分な検証も必要で、かなりタイトなスケジュールだったという。それでも、結果的にはソフトバンクのサポートもあり、基幹系の移行はスケジュール通りに完了できた。

 ところで、プロジェクトにおけるジャパンホームシールドのインフラ構築体制は、佐藤氏を含めメイン担当が2人、外部サポートメンバー1人を加えたわずか3人だったそうだ。プログラムやデータの移行においては各システム担当者数名と連携しながら、少人数で短期間に移行できたのは、ソフトバンクのサポートがあってのことだった。「仮想サーバーなどは頑張れば自分たちでも構築できたかもしれませんが、移行後も運用は続きます。運用はもちろん、その後のAzureの使いこなしも含め対応してもらえるMSPのサポートは、我々のような小さな体制では極めて重要です」と佐藤氏は言う。

MSPサービスでAzureのさらなる活用に期待

 基幹系システムに続き、順次サーバーの移行を進め、2021年の年末年始には予定通りMicrosoft 365の移行も実施した。移行後はテストを行い、順次本番環境へ切り替えたので「ユーザーは前のデータセンターか、Azureかは分からないままスムーズに移行することができました」と佐藤氏。移行後の後片付けや一部機能の移行残があったため、独立期限を3ヵ月延長することにはなったが、サーバー環境切替は前のデータセンターからの独立期限を守ることができた。

 Azureへの移行で、ハードウェアの容量制限がなくなり、容易にスペックや容量を拡張できるのは大きなメリットだ。従来の運用は、大手建材会社に頼っていた部分があり、その部分は自分たちで対処しなければならなかったが、ソフトバンクのMSPサービスに任せられたことで従来通りの体制で安定したITインフラの運用ができている。

 「我々がインフラの安定性を心配することはありません。これは、Azureに最適なソフトバンクのMSPサービスであるからこそのメリットでしょう。安定性の確保に時間をとられない分は、ITを活用するアクティブな部分に集中することができます」(佐藤氏)

 ジャパンホームシールドでは、外部でいくつかサブシステムも利用している。スムーズにAzureに移行できたことで、それらもAzureに集約できると考えている。「集約できればデータも一元的に管理でき、データの有効活用も可能でしょう。今後はデータから得られる価値を、新しいITインフラの強みにしていきたいです」と佐藤氏は言う。

 今回は短期間に安全に移行することが第一目的であり、ソフトバンクとしてもまずはその要望に応えることを重視した。とはいえ、移行を進める中で、ジャパンホームシールドから使い勝手を良くしたいといった要望も日々受けており、適宜それにも対応している。「たとえば、サーバー間のファイル共有をしやすくしたいという要望がありました。当初予定にはなかったAzure Filesを、指定されたVMとAVDの共用ドライブ両方として使えるように仕様変更しています。これによって、定期的に生成されるファイルを手動で移動させる手間が省けたようです。導入時には要件に入っていないことでも、MSPとして運用サポートしながらチケット管理で柔軟に対処しています」と大山氏は言う。ソフトバンクのMSPサービスでは、サーバーをリフトまたは自動構築するためのツールやCI/CDパイプラインが利用できる。加えて、ランディングゾーンとして、ガバナンスやセキュリティ、ネットワーク、ID管理、監視の仕組みなどが、ベストプラクティスとして顧客環境に標準実装されるという。これらも短納期と高品質の両立を実現できた理由の一つだと振り返る。

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 日本マイクロソフト パートナー事業本部 コミュニケーション&グローバルサービスパートナー事業本部 ビジネスディベロップメントマネージャーの本田教之氏も「Azure Expert MSPだけでなく、Azure Networking MSPでもあるソフトバンクだからこそ、短期間での移行ができたのでしょう」と言う。Azureへの移行後もオンプレミスと同じように運用できるわけではなく、クラウドに最適化した設計、運用が必要となる。そのためのノウハウは「Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure」としてまとめられており、ユーザーもこれを使えばAzureを使いこなせるかもしれない。しかし、ユーザーだけでそれを実現するのはそう簡単ではない。

日本マイクロソフト パートナー事業本部 コミュニケーション&グローバルサービスパートナー事業本部 ビジネスディベロップメントマネージャー 本田教之氏

日本マイクロソフト パートナー事業本部 コミュニケーション&グローバルサービスパートナー事業本部
ビジネスディベロップメントマネージャー 本田教之氏

 このCloud Adoption Frameworkを熟知しているのが、Azure Expert MSPだ。これを取得するにはAzureに関する技術力や専門知識のみならず、マネージドサービスの提供実績とその運用方法、今後の戦略や継続的な改善など幅広い領域において、第三者の厳しい認定を受ける必要がある。本田氏は「その認定を取得しているソフトバンクには高い信頼感がある。今後は、Azureへの移行で利用しやすくなったAIなどの新たな機能を積極的に使い、ジャパンホームシールドには攻めのITにも取り組んでほしい」と言う。

 「Azureには様々な機能がありますが、その部分はまだまだ使えていません。今後はサーバーレスなどをターゲットに、よりAzureを使いこなしていければと考えています。AIやビッグデータ分析などができるプラットフォームも作っていきたいです」と佐藤氏。そのための技術者確保は簡単ではないので、今後もソフトバンクのMSPとしてのサポートには期待がかかる。

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