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ゼロから「内製組織」を立ち上げたことで変貌したクレディセゾン 立役者の小野氏が明かす成功要因から学ぶ

アジャイルやスクラムの形にこだわる必要なし。“伴走型内製”で柔軟な体制を築く


 クレディセゾンではデジタル技術でビジネスを変革、転換する「CREDIT SAISON Digital Transformation(以下、CSDX) VISION」を掲げ、デジタル時代を先導する企業を目指している。同社のDX戦略「CSDX」の取り組みは、経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄2023」の選定でも評価された。CSDX戦略の実践においてクレディセゾンでは、自ら開発、改善、運用し、デザインやデータ分析などを行える能力を持ち、ビジネスおよびテックサイドが協調し、スピーディーかつ柔軟に事業を創出、改善ができる体制を構築している。内製の選択肢を持ちつつIT業界のパートナーとの協業も継続する同社の“ハイブリッド型内製開発”について、取締役 兼 専務執行役員 CDO 兼 CTOの小野和俊氏に話を訊いた。

バイモーダル戦略で「EXとCXのためのDX」を推進

 「セゾンカード」の運営会社として知られるクレディセゾンだが、他にも不動産ファイナンスなど幅広いビジネスを展開している。クレジットカードのビジネスは引き続き成長しているが、事業利益では既に全体の3割程度で、小野氏は「“ノンバンク”として多角的なビジネスを展開する会社です」と言う。

 小野氏は大学卒業後、後にOracleに買収されるSun Microsystemsに入社する。シリコンバレーでの勤務などを経て独立し、2000年10月にアプレッソを創業し代表取締役に就任し、データ連携ソフトウェア「DataSpider」の開発、販売を行った。2013年にアプレッソがセゾン情報システムズに吸収され、そのタイミングでセゾン情報システムズに入社し、2015年6月には同社取締役CTOに就任。2016年4月には常務取締役CTO兼テクノベーションセンター長となり、DataSpiderとHULFTを組み合わせたソリューションや、HULFTのクラウド対応などを積極的に展開し、同社を新しいデジタル技術に強い会社に生まれ変わらせた。それらの実績からクレディセゾンのDX牽引を求められ、2019年3月より同社に入社しCTOを務めている。

 外部からCTOとして入ってDXを進めるとなれば、最初の四半期くらいの時間を使いグランドデザインを描き、以降でそれを実践するのがよくあるアプローチだろう。とはいえ社内メンバーのデジタルリテラシーや取引先との電子的なやり取りがどれくらい進んでいるかといったことは分からない。小野氏は「机上の空論で『クレディセゾンのDXはこれが最適解』とグランドデザインを描き進めても、地に足が着いていないものになるでしょう」と言う。

 そのため小野氏が選んだアプローチは、まず動いてみることだった。計画の前に軽く“Do”をし、軽く“Check”して“Act”する。そのサイクルをどんどん回し「もし駄目なら止め、ちょっと変えて行けそうなら変える。行けそうだと確証が得られたら最後に“Plan”する。つまりPDCAではなく“DCAP”で動くことにしました」と話す。

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クレディセゾン 取締役 兼 専務執行役員 CDO 兼 CTO 小野和俊氏

 事業部のやり取りからIT部門の仕事のやり方まで、様々なことを試して見えてくるものがあった。そして「クレディセゾンにおけるDXの最適解だと見定めたのは、入社してから2年半後のことでした。それが2021年9月に発表したCSDXです」と小野氏。

 CSDXでは金融機関に求められる安定性重視の「モード1」と、スピードと柔軟性が求められる「モード2」を共存させるバイモーダル戦略を基礎としている。そのために先端技術を最大限に活かしつつ、既存技術の良さを認め両者を融合させる。ITやデジタル人材の構成もこのバイモーダル戦略に基づき、エンタープライズIT系の人材とスタートアップ経験者やWeb系企業の人材を集めてチーム編成しているという。

 「私は小学4年生からプログラミングをやっていて、読み書き・そろばん・プログラミングは当たり前という感じでした。そういう人からすると、ITなんて当たり前で、すぐにそれを使いたがる。今のDXではデジタル技術が前面に出過ぎています。そうならないようにするためにも、カスタマーエクスペリエンス(CX)とエンプロイーエクスペリエンス(EX)の一方、あるいは双方に寄与できないDXの取り組みは、すべてデジタル技術の乱用に過ぎないと考えています」と小野氏。DXの目的としてCXの向上は多くの企業が謳っているが、EXで社員の仕事体験が変わるところにポイントを置いているのがCSDXの特長でもある。「良いCXのためにも、良いEXが大事です」と強調した。

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約4年半で大小30のシステムを内製 動きながら次を考える

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

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