営業、ショールームでたくさんの顧客対応経験を積む
有馬さんの大学の専攻は国際文化学部の米国文化論、卒論テーマは米国の多文化主義と歴史教育だった。交換留学で渡米していたこともあり、就職活動を始めるのがかなり遅くなった。出遅れた分短期間にできるだけ多くの企業を受け、その1つがイトーキだった。「入社説明会で営業担当の方が、空間を提案する仕事だと説明していて、それがかっこいいなと思いました」と有馬さん。デザイン性のあるオフィスを作る仕事に魅力を感じ、当時のイトーキのキャッチフレーズ「人が主役の環境づくり」にも共感した。
正式にイトーキに応募し、採用が決まる。配属されたのは、法人営業部だった。イトーキはOJTを重視しており、先輩について仕事を覚える。徐々に経験を積み大手企業なども担当、とある企業の移転案件ではコンペを勝ち取り、顧客の総務担当者から信頼を得る。その結果、別拠点への移転案件では、有馬さんを指名で依頼が来たこともある。営業の仕事に達成感を得る一方、顧客の課題に向き合い、情報収集、提案、受注、アフターフォローといった多岐に渡る業務をこなす必要があり、繁忙期には夜遅くまで働くことも珍しくなかった。
営業の仕事には充実感もやりがいはあったが、結婚して新たなライフステージに入ったところで、内勤の仕事への異動を希望した。新たな仕事としてアサインされたのは、ショールームのスタッフだった。
営業では積極的に動いて成績を上げる仕事のやり方だったが、ショールームは訪れてくれるお客様を案内することが主な業務になる。ショールームで対応した結果は、営業に引き継ぐため、対応が商談に結びついたかなどはよく分からなかった。そのような状況では、なかなかモチベーションを維持するのは難しい。とはいえ、「案内したお客様に購入を決定してもらうことがもちろん最終目標ですが、小さな目標を設定して、仕事に取り組みました」と言う。
ショールームでの顧客対応以外にも、ショールームスタッフにはさまざまな仕事がある。たとえばショールームでは、何百種類もあるサンプルの管理なども行う必要があった。有馬さんはそうした手間のかかる仕事を工夫し、なるべく便利に使えるようした。
ショールームでの仕事は12年ほど続き、実績が認められ終盤の3年間はショールームの館長を務める。12年間にわたり、さまざまな顧客の対応をした。喜ばれる経験も多かったが、まれにクレームを受けることもあった。またコロナ禍では、顧客が来館できず閉館を余儀なくされた。とはいえその逆境の中でも、オンライン見学を実施するなど新たな取り組みも行った。他にも、ショールームの予約システムの改修では、実際に普段顧客と対応する経験を踏まえ、より良いシステムになるよう積極的に関わるようにもした。
10年以上ショールームの仕事で経験を積み、ショールームに関わることならばほぼ全てが分かるようになった。このままさらに20年目を迎えるのかと考えた際に、何か新しいチャレンジをしたいと考えるようになる。営業から異動する際にも、特にショールームを希望したわけではなかった。このときもどの部署に異動したいとの希望は出さず、新しいところで新しいことをやりたいとだけ人事には伝えた。