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週刊DBオンライン 谷川耕一

RPAベンダー、Blue Prismの生存戦略──SS&Cとの融合でインテリジェントオートメーション・プラットフォームベンダーへ

 代表的なRPAベンダーのBlue Prismは、2022年3月にビジネスプロセスマネージメント(BPM)サービス大手のSS&C Technologiesに買収され、SS&CのソリューションとRPAを融合させることでインテリジェンス・オートメーション・プラットフォームへと変革した。

RPAからインテリジェントオートメーション・プラットフォームへ

 人の反復作業を、ロボットに置き換え自動化するRPA(Robotic Process Automation)。RPAのロボットは「Digital Labor」とも呼ばれ、人材不足に悩む企業などで重宝されている。便利に使え効果も見えやすいRPAだが、手間のかかっているプロセスをRPAで自動化するのではなく、より広い視点からビジネスプロセスそのものを見直すBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)のアプローチをとるべきとの考えもある。

 実際、RPAを用いた自動化により、無駄なビジネスプロセスが塩漬けにされるケースもある。また生成AIの登場で、自律的にビジネスを効率化するアプローチも新たに生まれている。RPAはこのまま過去に流行ったテクノロジーとして、徐々に市場から消え去ってしまうのだろうか。

SS&C Blue Prism マネージングディレクター マイク・マガウ(Mike Megaw)氏

 RPAの市場が転換期を迎える中、RPAベンダー各社はソフトウェアロボットの構築や管理などに止まらず、業務の無駄なプロセスを自動で見つけ出すプロセスマイニング機能などを追加し、インテリジェントオートメーションのソリューションへと進化させている。代表的なRPAベンダーのBlue Prismは、2022年3月にビジネスプロセスマネージメント(BPM)サービス大手のSS&C Technologiesに買収され、SS&CのソリューションとRPAを融合させることでインテリジェンス・オートメーション・プラットフォームへと変革した。

 SS&Cは、多国籍のソフトウェアテクノロジー企業だ。米国NASDAQ市場に上場しており、時価総額は130億ドルを超える。世界106の都市にオフィスを構え、従業員は2万7000人を超える。同社は主にITインフラのソフトウェアサービスを提供しており、特に金融サービス企業向けサービスの領域に強みがある。

 SS&Cの主力の1つが、BPM(Business Process Management)製品のChorusだ。SS&CはChorusを中心にインテリジェントオートメーション・プラットフォームのソリューションを展開してきた。これに買収したBlue PrismのRPAが加わることで、「より包括的なインテリジェントオートメーション・プラットフォームのソリューションを提供できるようになりました」と言うのは、SS&C Blue Prism マネージングディレクターのマイク・マガウ(Mike Megaw)氏だ。

 BPMのプラットフォームのChorusとBlue PrismのRPAは、補完する関係にある。さらにSS&Cには、ドキュメント・オートメーション、ローコード/ノーコードのツールなどもあり、これらでエンド・ツー・エンドの包括的なインテリジェントオートメーション・プラットフォームができあがる。

 Blue Prismが加わったことで、顧客へのアプローチの仕方も拡がる。もともとSS&Cの製品を導入してきたような企業では、新たにBlue Prismも活用してプロセスの自動化範囲を容易に拡げられる。一方Blue Prismから入り、RPAの自動化に止まることなくより包括的なビジネスプロセスの効率化や変革に取り組むことも可能となった。

 従来であれば、ビジネスプロセスを効率化し進化させるには、BPMとRPAを適宜組み合わせ、ローコードツールなどの成果も加え、必要に応じそれらを連携させるなどの手間が必要だった。それがRPAのプラットフォームからインテリジェントオートメーション・プラットフォームに進化したことで、1つのベンダーで顧客ビジネス全体のプロセス改善に対し、包括的なソリューションを提供できるようになったわけだ。

 とはいえ、未だ市場ではBlue Prismは単なるRPAベンダーと見られているケースも多いだろう。買収から1年以上の時間が過ぎ、SS&Cの一員としてインテリジェントオートメーション・プラットフォームを提供できることを、顧客には丁寧に説明している。その上で新たなメッセージを発信する機会となるマーケティング活動にも力を入れており、「顧客の理解は着実に進んでいます」とマガウ氏は言う。

 RPAのツールでは、経理や人事などのバックオフィス部門で行われている繰り返し作業などをロボットで自動化するケースが多かった。これがインテリジェントオートメーション・プラットフォームとなると「より良い顧客サービスを提供することで顧客体験を改善するような、フロントオフィス業務の範囲でも自動化の価値を発揮できます」とマガウ氏。

 たとえば顧客がECサイトなどで買い物をした際に、ECサイトと受発注システムや物流システムなどを連携させ顧客に必要な情報をタイムリーに発信し満足度の向上を図ろうとするだろう。この時、個々システム間連携をローコードツールでAPIを介して行うケースがある。一方、レガシーなシステムやSaaSなどでは、APIがそもそもないか、あってもそれを使って連携するのに手間とコストがかかることも多い。その場合は、RPAを使うほうが安価に迅速に連携できる。顧客の多様なシステム状況に応じ、最適なシステム間連携、プロセスの自動化を提案することでビジネスの変革につなげる。対してRPAしかなければ、RPAツールだけで顧客の課題を解決しなければならない。

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買収による規模拡大と包括的なソリューションが、専業ベンダーに対する大きな優位性となる

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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