「設計にマジックを」設計方法を再構築する
「3DEXPERIENCE World 2024」は2月11日〜14日、米テキサス州ダラスで開催された。
同イベントの中心となるのは、ダッソー・システムズが1997年に買収した3D CADのSOLIDWORKSで、2019年まで「SOLIDWORKS World」というイベント名で開催されていた。ダッソーは他にもシミュレーション「DELMIA」など12の製品を持ち、共通のクラウドベースのプラットフォーム「3DEXPERIENCE(3DX)」を軸とした製品戦略をとる。これを利用して、設計から製造プロセス、オペレーションを含むサプライチェーン全体を連動できるという。SOLIDWORKSでは、3DEXPERIENCEと結びつけて設計から製造、マーケティング、管理、解析に拡張していくためのプラットフォーム「3DEXPERIENCE Works」をプッシュしている。
「控えめに見ても飛行機が10機あれば10機、10台の自動車があれば8台がダッソーのソフトウェアを利用して設計されている」というのは、SOLIDWORKS CEOを務めるManish Kumar氏。同社は製造における大きなシェアと存在感を持つ。
また、2023年まで28年間、CEOとしてダッソー・システムズを率いてきたBernard Charlès氏(現Executive Chairman)は約5,000人の来場者を前に、設計の世界に再び“変化”が押し寄せていると語る。
設計の分野はこれまで2Dから3Dへ、オンプレミスからクラウドへと変化を遂げてきた。そして、変化の中心に今あるのは“AI”だ。「設計のやり方を再構築するときがきた」とCharlès氏。AIが切り開く“新たな設計の在り方”を「Magic SOLIDWORKS」として展望した。AIを組み込むことで魔法(Magic)のように、簡単にSOLIDWORKSを使った設計ができるという意味だ。
たとえば、電気自転車の設計であれば「リサイクル素材で作られたハンドルバーの案を出して」とチャットで問いかけるだけで複数の案を提案してくれる。そこからシミュレーションも自動化で行えるようになるという。また、手書きスケッチから“製造可能な”ハンドルバーのモデルを複数生成したり、軽量化するための案を出したりなども可能だとCharlès氏は説明する。設計者はそこから選択すれば良い。
これらが実現できるのは、モデリングとシミュレーションが3DEXPERIENCEプラットフォーム上にあり、そこにAIを組み込んだからだ。なお、Charlès氏は約10年前からAIに取り組んでおり、既にAIエンジンは第3世代に至っていると話す。
Charlès氏は、設計に重要な影響を与える技術として「バーチャルユニバース」も提示。仮想と現実を融合させた、バーチャルツインのような環境だ。会場ではユーザーが自室を映すと、家具を選んだり生活空間をデザインしたりする様子を見せた。
「将来的にはモデリングやシミュレーション、AIを統合することで『バーチャルユニバース』上にバーチャルツインを構築し、ユーザーや設計者が過去に構築した財産(=データ)を活用できるようになる」(Charlès氏)。
特に強調するのは知的財産(IP)の保護だ。「最高レベルのサイバーセキュリティ対策を施している。データは顧客のものであり、同意なしにデータを共有することはない」とCharlès氏は約束した。