アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は5月16日、生成AIサービスの最新アップデートに関する記者説明会を開催した。
同社 サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長/ソリューションアーキテクト 小林正人氏は説明会の冒頭、生成AIに対する同社のアプローチから説明を始めた。
小林氏は普段、顧客と接する中で「生成AIの既存モデルを使ってみたけれど、どうもかゆいところに手が届かない」という声をよく聞くという。これについて、一般的に公開されている既存モデルを用いると一般的なタスクは処理できるものの、各企業における業務特有の判断は難しいケースもあると指摘。このようなニーズに対応するためには、アプリケーションの中に企業特有の知識を組み込んでいく必要があるとし、「それを可能にするのがデータ」だとした。
実際、標準の基盤モデルを企業に特化した形でカスタマイズして利用したいというニーズは増えているという。そのための手段として小林氏は「検索拡張生成(RAG)」「ファインチューニング」「継続的な事前トレーニング」を挙げ、「AWSはお客様の目的に合わせて、これらの手法から必要なものを判断し、最適な組み合わせでサービスを提供することに重きを置いています」と説明した。
これを実現するために、同社では提供するサービス群を3層にわけて提供しているとして下図を提示。既存モデルでは会社の目的を達成できず、モデルを一から作る場合には最下部の1層目に位置するインフラストラクチャー群を利用できる。また、既存モデルをそのままあるいはカスタマイズして用いたいときは、2層目にある各モデルを組み込んだアプリ開発のためのツールとして「Amazon Bedrock」を提供。さらに、生成AIを組み込んだ構築済みのアプリケーションで目的が達成されるのであれば、3層目にあたる「Amazon Q」シリーズを提供できる体制を整えている。
Amazon Bedrockについて、小林氏は「幅広いモデルの選択肢を提供しており、将来より良いモデルが登場した場合に使うモデルを変更できる点が大きな特徴」だと強調。実際に同サービス内で使えるモデル数は、半年前と比べて倍ほどに増えているという。
続いて小林氏は、生成AI関連サービスのアップデートについて、先ほど挙げた3層構造に沿って詳細を説明。まずは生成AIを組み込んだアプリケーションとして、Amazon Qシリーズを紹介。以下に示す機能は米国時間4月30日に一般提供開始が発表されている。
- Amazon Q Business:企業システム内のデータや情報に基づいてタスクを完了する生成AIアシスタント。データソースと接続できるコネクタが用意されており、既存IDやアクセス権限を統合
- Amazon Q Apps:Amazon Q Businessの一部として提供。プログラミング言語を書かずとも、自然言語で企業データに基づいたアプリを生成できる。また、作成したアプリはライブラリー機能によって企業内で共有が可能
- Amazon Q in QuickSight:生成BIアシスタントにより、自然言語によるダッシュボード作成が数分で実現できる。Amazon QuickSightにAmazon Qを連携することで利用可能に
- Amazon Q Developer:ソフトウェア開発者のための生成AIアシスタント。調査やドキュメント、フォーラムの確認など、煩雑な繰り返し作業を削減できる
- Amazon Q Data Integration in AWS Glue:データ統合サービス「AWS Glue」向けのデータ統合パイプラインを自然言語によって構築可能
そして、基盤モデルを組み込んだアプリケーションを作るためのツール群として提供されているAmazon Bedrockの機能アップデートも以下の通り紹介した。これらは米国時間4月23日に発表されている。
- Knowledge bases for Amazon Bedrockの東京リージョン対応:RAGをAmazon Bedrockによって実現する機能。企業内データの蓄積と問い合わせにフルマネージドで対応
- Agents for Amazon Bedrockの東京リージョン対応:組織のシステムやデータソースを連携させて、多段階ステップから構成されるタスクを実行できる
- Guardrails for Amazon bedrockの一般提供開始/東京リージョン対応:組織のユースケースと責任あるAI利用ポリシーに基づき、生成AIアプリに追加の安全機構を導入。NGワードをカテゴリー化して、その属性ごとのフィルタリングや、ワード単位でのフィルタリングなどが可能
なお、既にAmazon Bedrock Studioのプレビュー版がリリースされている。これにより、Amazon Bedrockの主要機能を活用することで、生成AIが搭載されたアプリケーションのプロトタイピングを迅速に行えるという。
さらに、顧客がカスタマイズしたモデルをAmazon Bedrockにインポートして生成AIアプリケーションで活用できるAmazon Bedrockカスタムモデルインポート機能のプレビューが開始されたことや、Amazon Bedrockのモデルを評価・比較し、ユースケースに最適なモデルを効率的に選択することをサポートする機能も紹介し、発表を終えた。