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中西一博のセキュリティレポート 変化するWeb攻撃 戦いの現場で何が?

削ぎ落とされるブランドの信頼と収益──進化する「スクレイパーボット」の実態と、最新の対抗手段とは

最新のスクレイパー検知対策の成果は?

 最新の検知手法を用いたスクレイパー対策ソリューションは、世界中の航空会社、ホテル、旅行代理店のサイトや、人気商品を取り扱う小売、製造小売のEコマースサイト、ビジネス情報を提供するサイトなどで、既に先行して利用され始めている。もちろん日本も例外ではない。

 あるサイトでは、システムが洗い出したスクレイパーのアクセスをサイト側の情報と突き合わせて検証したところ、不正予約を9割以上リアルタイム検知することに成功していたと実証された。本運用を開始して以降は、それまで短時間で何百件も発生していた不正予約の件数がゼロになり、買い占めの撃退に成功したという。

 一度予約や注文が成立してしまうと、後から不正が発覚しても、大量のキャンセル処理に人員やシステムなどのリソースを割かなければならず、通常の業務にも支障をきたす恐れがある。また、注文のキャンセルによって収益予測が難しくなることも、スクレイパーが引き起こす大きなリスクだ。そのリスクをボットがアクセスしている最中に洗い出し、リアルタイムに阻止できるテクノロジーが、また一段進化したといえるだろう。

 こうした対策を行うことで、海外のある航空会社では、ハイリスクのスクレイパーによるアクセス数が対策前に比べてわずか0.3%まで減少。不正を行おうとする試みを断念させ、それまでボットアクセスに食われていたシステムリソースの削減にも大きな効果を発揮している。

  一般的に、悪性のスクレイパーを排除することで、以下のような効果が期待できる。

  • 買い占め、転売の防止により、客離れやブランド毀損を回避
  • 消費者が欲しい商品を購入できるようになり、「ついで買い」によるアップセルも図れる
  • コンバージョン率の向上および各種指標の精度向上による、的確な投資判断で収益が増加
  • インフラ費用などのITコストに加え、キャンセルやクレーム処理などに割く人件費などを削減
  • 競合他社との不毛な価格競争を回避し、過度な値下げ圧力から利益を守る
  • 偽サイトを用いた、偽物の流通やオンライン詐欺を抑止することで、ブランドの毀損を回避
  • 価値のあるコンテンツや情報資産の流出、および無断転載・転用を阻止し、ビジネスを保護

見えていないコトは防げない

 これらの対策効果の裏を返せば、悪性のスクレイパーによって、実に様々なビジネス上のリスクが発生していることがわかるはずだ。実態のある商品やサービスの買い占め行為だけではなく、データなどの無形資産の損害も考慮すると、暗躍するスクレイパーの影響は幅広い業界に及んでいる可能性がある。

 しかし、現状ではボットによるスクレイピングや買い占めなどの行為に対しては、特定のイベントチケットの転売行為を禁止している以外に、規制する法律が存在しない。そのため、進化し続けるスクレイピングによって削ぎ落とされている、収益と築き上げてきたブランドの価値を守るには、事業者が自衛する力を磨き続けなければならない。

 見えていないコトは防げない。インターネット上の総トラフィックのうち、約半分に及んでいるボットのアクセスによって自社のサイトやサービスに何が起こっているのか。問題意識を持って、まずは可能な範囲で影響を「みえる化」してみることをお勧めしたい。

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この記事の著者

中西 一博(ナカニシ カズヒロ)

アカマイ・テクノロジーズ合同会社
マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー日立グループ全体のセキュリティ設計を担当後、シスコシステムズで、セキュリティ分野のSE、プロダクトマネジャー、製品マーケティングとして従事。現在はアカマイ・テクノロジーズでクラウドセキュリティおよびクラウドコンピュー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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