Data Cloudが「非構造化データ」対応を強化
このようなデータ活用のニーズを持つ企業は、FedEXだけではない。既にセールスフォースは、その先を見据えている。Data Cloudの次のステップとして、Dreamforce 2024で発表されたのが「非構造化データ」への対応だ。PDFファイルにおけるテキストデータ、音声や動画ファイルのデータのような非構造化データは、企業内データの8割を占めるとも言われている。これを予測AIだけでなく、AIエージェントが参照できるようになれば、構造化データだけを対象としていたときと比べて、より詳細な意思決定の材料を基にしたアクションを実現できるようになるだろう。
FedExの事例で見たように、企業はデータへのアクセスにおいて柔軟性を求めている。しかも、そのニーズは企業により異なる。既にSalesforceは、アプリケーション用コネクターを提供しており、Sales CloudやService Cloud、Marketing Cloud、Commerce Cloudなどに接続し、それらのデータをニアリアルタイムでData Cloudに取り込むことが可能だ。取り扱えるデータを増やすため、セールスフォースは200超のData CloudコネクターとMuleSoftコネクターも用意している。
さらに、ゼロコピー統合が可能な接続先パートナー「Zero Copy Partner Network」の拡充も進んでいる。Zero Copy Partner Networkのゼロコピー統合は、双方向であることも大きな特徴だ。Customer 360アプリケーションからデータレイクやDWHにあるデータにアクセスできるだけでなく、データから得たインサイトを元のデータレイクやDWHに戻しての共有もできる。また、ISVパートナーやデータパートナー向けに「Zero Copy Data Kit」を提供し、Data Cloudからパートナーのデータにもアクセスできるようにしたという。
Dreamforce 2024では、ゼロコピー統合を強化する2つの機能が発表された。1つは「File Federation for Zero Copy Integrations」で、データレイクにある大規模データセットをコピーすることなく可視化できる機能。これは2024年10月のパイロット提供開始を予定している。もう1つが「Data Cloud One」、コードを1行も書くことなく、ビジネスユーザー自身が必要なデータをData Cloudに取り込めるという。こちらは既に一般提供を開始している。
さらに、ビジネスユーザーが非構造化データからのインサイトを容易に得られる「Data Cloud Vector Database」の一般提供が開始された。たとえば、AIエージェントに適用すると、カスタマーサポートの電話履歴、配達確認の写真、販売契約書のPDFファイルの情報などを検索し、Customer 360アプリケーションからアクションを実行することが可能になる。