Specteeは12月2日、事業戦略発表会を開催し、AIリアルタイム防災・危機管理サービス「Spectee Pro」を海外市場へ本格展開することを発表した。
説明会の冒頭、Spectee 代表取締役 CEO 村上建治郎氏は、同社のこれまでの歩みや現況について紹介した。同社は、東日本大震災が発生した2011年に創業。被災地の情報をどう集約し、災害時にどう役立てていけるかといった観点から事業をスタートさせている。2014年にはSNSを中心とした情報源から災害に関する情報を集約して発信する個人向けのスマートフォンアプリケーション「Spectee」をリリースし、2016年には法人向けのPC用アプリケーションを提供開始。その後、2020年にSpectee Proをリリースし、2023年にはサプライチェーン向けリスク管理サービス「Spectee SCR」を提供開始した。
今回、海外市場へ展開することが発表されたSpectee Proについて、「地図上に様々な情報を表示できることが大きな特長です」と村上氏は説明する。SNS上の情報に加え、気象庁による気象データ、道路や河川カメラのデータ、交通情報や停電の情報などの情報を網羅的に収集し、Spectee Proにてリアルタイムに通知。被害状況や発災リスクを可視化することで、BCP対策やサプライチェーンのリスク管理などにも役立てられるとしている。
現在、Specteeの契約数は1,100以上となっており、そのうち自治体や官公庁が45%を占めている。村上氏は「こうした日本での実績を踏まえ、この度フィリピンを皮切りに世界展開をしていきます」とした。
続いて、Spectee 取締役 COO 海外事業責任者 根来諭氏がグローバル進出について詳細を説明。グローバル展開の背景として「世界中におけるレジリエンスへの需要増加」と「日本が誇る防災の技術とソリューション」の2つを挙げた。
1つ目について根来氏は、2023年の自然災害による世界の経済損失は約58兆円に上ることに触れ、「気候変動によって、特にフィリピンでは2024年10月末から1ヵ月で5つの台風が上陸するなど、深刻な災害が発生しています」と警鐘を鳴らす。そして、このような状況に適応できる“レジリエント”な社会の構築が必要とされているとした。2つ目については、災害大国である日本ではITを活用した防災関連の技術開発が進んでいることを挙げる。
グローバル展開の最初の国にフィリピンを選んだ理由には、災害大国であることに加え、英語が広く通じること、デジタルネイティブの若い世代が多いこと、今後重要性が増すASEANに属していることなどを挙げた。
実際に現地で事業を立ち上げるにあたっては、JICA(国際協力機構)が運営する「中小企業・SDGsビジネス支援事業」を活用するという。これは、社会課題を解決する力をもった企業をJICAがバックアップし、ビジネスの立ち上げや運用を支援するもの。根来氏は「JICAと協力することで現地の方に信頼してもらうことができ、ハイレベルな層の方とも話をすることができました」と効果を説明。
2023年に現地で行ったフィージビリティスタディでは、多くの現地企業からポジティブな反応が得られたという。こうしたニーズの高まりを踏まえ、Specteeはフィリピン公共セクターに80ライセンスの導入を支援するとした。現在、導入先の選定は最終段階に入っており、今後はセミナーや訪問を通じて現場での活用をフォローし、ユーザーのフィードバックから改修を行う予定だ。なお、同社はフィリピンに法人をもっていないため、販売代理店を通じて提供していくとした。
今後の展開について、村上氏は「2026年にはタイ・ベトナムでもサービスを提供し、ASEAN地域で事業をさらに拡大していく見込みです。そして2030年には世界トップシェアを狙っていきたいと考えています」と意気込んだ。