「サイバー防衛シンポジウム熱海2024」2日目:明治大学 齋藤孝道教授が読み解く「デジタル影響工作」
「サイバー防衛シンポジウム熱海 2024」レポート

2024年8月31日から9月1日、「サイバー防衛シンポジウム熱海2024」が開催された。いわゆる「温泉系シンポジウム」の1つであり、特に国防や国家安全保障といった視点による内容が特徴だ。今回は台風10号の影響で現地開催が中止となり、オンラインでの開催となった。本稿では2日目の内容をレポートする。
影響工作は「非軍事の戦争行動」
台風の影響によりオンライン開催となった「サイバー防衛シンポジウム熱海2024」。2日目は、本来のプログラムに沿った形で開催された。同シンポジウムは、1日目が昼から夜まで、2日目は朝から昼までというスケジュールになっており、大会委員長である伊東寛氏によると「土曜日の朝から出かけても間に合い、日曜日の夕方には家に帰ることができることを考えたスケジュール」だという。
2日目最初の講演は、明治大学 サイバーセキュリティ研究所所長の齋藤孝道氏による「情報戦の新たなフロンティア:デジタル影響工作を読み解く」。同氏は経済安全保障、デジタル影響工作など新領域の安全保障に関する偽情報・誤情報を扱うメディア「INODS UNVEIL」も立ち上げている人物だ。

レンジフォース株式会社 代表取締役
齋藤孝道氏
同テーマで講演を設けた背景について、齋藤氏は「新秩序時代、『多極化』の時代」と「『非軍事の戦争行動』による脅威の高まり」を挙げた。1991年にソビエト連邦が崩壊してアメリカ一強の時代を迎えるも、2008年にリーマンショックが発生。2010年には中国がGDP世界第2位に台頭するなど、現代は「新しい秩序/多極化の時代」に突入していると指摘する。また、それらにともなう影響工作は、まさに「非軍事の戦争行動」であるとも述べた。
この影響工作には様々な定義があるが、齋藤氏は「国家・非国家間での競争(戦い)における情報戦の一種で、競争相手国の意思決定に影響を与え、行動の変容を促すこと」と定義している。特に「行動の変容を促すこと」がポイントだろう。その歴史は1920年頃、2つの世界大戦の狭間までさかのぼる。同時期にラジオが普及して映画が登場すると、それらはプロバカンダに活用されるように。2000年代にインターネットが普及した後、東欧や中央アジアでの一連の革命的な民主化運動、いわゆる「カラー革命」をターニングポイントとして影響力は増加。現在ではSNSやアドテクノロジー、AI技術などが駆使され、サイバー空間における影響工作が先鋭化している。
特にAIは「量の増加」「質の向上」「パーソナライズ化の強化」「もっともらしい偽情報の副次的生成」といった影響を与えているとして、偽情報や誤情報が信じられやすく、拡散されやすい状況を生み出しているとした。

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吉澤 亨史(ヨシザワ コウジ)
元自動車整備士。整備工場やガソリンスタンド所長などを経て、1996年にフリーランスライターとして独立。以後、雑誌やWebを中心に執筆活動を行う。パソコン、周辺機器、ソフトウェア、携帯電話、セキュリティ、エンタープライズ系など幅広い分野に対応。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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