2. Agentic AIの時代
近年のAIトレンドの中でも、特に注目を集めているのが「AIエージェント(Agentic AI)」です。日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、海外では既に多くのサービスが登場しています。
AIエージェントとは
AIエージェントとは、与えられた目的やタスクを自律的に判断・実行するAIシステムのことを指します。多くの場合、人間のタスクの一部または大半を代行できるよう設計されています。たとえば、社内資料の作成からカスタマーサポートまでを自動化するなど、ビジネス上の業務を相当程度肩代わりすることが可能になります。
AIエージェントの普及を支える“オンボーディング”の仕組み
今回のNVIDIAのKeynoteで示唆された点の一つが、AIエージェントの導入に欠かせない「オンボーディング」の重要性です。今回は「NeMo」と呼ばれる仕組みが発表されていました。
たとえAIがいくら賢くなっても、企業ごとに異なる業務プロセスや独自の用語、明文化されていないルール(暗黙知)は存在します。AIエージェントを実用化するためには、そうした独自ルールや業務フロー、権限管理などをAIに“教え込み”、適切なフィードバックを与えつつ活用していく仕組みが不可欠です。
これは、いわば「デジタル社員」を新たに雇用するようなものです。新入社員が入社した際、人事部門が教育や研修を行うように、IT部門がAIエージェントに対して業務を教え、管理する体制が必須となるでしょう。
それを象徴する言葉として、“In a lot of ways, the IT department of every company is going to be the HR department of AI agents in the future,”「あらゆる意味で、将来的には、すべての企業のIT部門がAIエージェントの人事部門になるだろう」という発言がファンCEOからありました。
「いやAIエージェントなんて聞いたことがないし、そんなわけないだろう」と思う方もいるかもしれませんが、実際に私を含め、AIを日頃から触る人には、AIエージェントを使って様々なタスクを遂行している人が出てきています。たとえば、調べ物とその上で出てきた示唆をまとめたレポートを作るタスクや、開発でコードを書いたり修正したりする際に、エージェントが補佐してくれるなどです。
人がAIエージェントに指示を出して仕事をすることが未来の働き方になることは、ほぼ確定的な未来かと考えています。ただし、これまでのシステムと違い、AIエージェントは入力と出力が必ずしも固定されていないため、管理方法が大きく変わります。
自由度を高くすればするほど成果が上がる可能性はありますが、セキュリティやコンプライアンスへの懸念も強まります。企業はこのバランスを取る仕組みを整備する必要があります。そのため、技術が発達したとしても、人や組織がAIエージェントとの付き合い方を学んでいく必要があり、そこで差がつくことになるのではないかと考えます。