ブレインパッドは、ユニ・チャームの社員専用生成AI利用環境「UniChat」の精度改善を行うとともに、多部門(複数部門)に利用範囲を拡大する支援を行ったと発表した。
UniChatは、ユニ・チャームの国内約3,000名の同社社員が利用するチャットツールとして、まずは法務部門に対する問い合わせの効率化をテーマに活用が始まったもの。2023年8月に、同社の情報システム部が主導し、テキスト生成が可能なUniChatを開発。同年秋ごろより、さらなる拡張性を求め、「RAG」に加えて「ロングコンテキスト」や「音声・画像・動画などのテキストデータ以外の入出力」など、生成AIをさらに活用するための調査を開始したという。同調査において、同社は「AIの学習のために外部データを利用できること」や「複数部門へ展開できること」を重視しており、調査の結果、生成AIのビジネス活用に関する知見とマルチモーダルAIの導入プランを有するブレインパッドに支援を依頼することを決定。ユニ・チャームは、この決定に際し、ブレインパッドはベンダーロックインがなくマルチベンダーでの対応が可能である点に加えて、同取り組みを主導するユニ・チャームの情報システム部が数名程度の少人数組織であることから、組織に伴走して支援する実績がある点を評価したとのことだ。
ユニ・チャームの法務部門に寄せられる質問には初歩的なものや簡易的なものも多く、従来は、それらの対応に要する時間がコア業務を圧迫している状況にあったという。そこでまずは、1人あたり月100件程度、約17時間をかけていた問い合わせ対応業務を効率化すべく、2023年12月からブレインパッドの支援を得て、Google CloudのGeminiとVertex AI Agent Builderを活用したPoCを開始。このPoCでは、法務部門と情報システム部との連携により、AIの根幹となるデータの整備を進めた結果、質問に対する正答率が90%を記録し、想定を超える効果を創出できたとしている。同時に、社員の利便性の向上を最優先に位置付け、チャットの利用状況の分析結果を基にしたUIの改善も進めていったという。
このような半年間のPoCを経て、2024年8月よりUniChatの本番利用が開始されたところ、法務部門1人あたりの問い合わせ件数は最大で月3件に減少し、対応に要する時間も最大で月30分に短縮され、業務効率化を実現できたとしている。
ユニ・チャームは、法務部門における成果を踏まえ、2024年10月からは人事や経理、情報システム、知財など複数の部門へUniChatの利用を拡大。さらに、特定部門への問い合わせだけでなく、問い合わせ先がわからない場合にも回答が得られる全体横断型のチャット窓口を設け、UniChatの利用率は約1.3倍に上昇したという。
また、ユニ・チャームの知財部門においては、社内データだけでなく、特許庁が提供するデータソースをUniChatに学習させ、要約の生成および資料化までの自動化を実現。これにより、UniChatが特許情報を利用した新規開発を担えるようになるなど、今後は、業務効率化だけでない新たな価値を生むための生成AI活用にも挑戦していくとしている。
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