2025年2月12日、富士通と横浜国立大学は、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた、台風にともなう竜巻予測の気象シミュレーション技術開発に係る記者発表会を開催した。
今回の技術開発により、台風と竜巻のシミュレーションが、共通の格子系を用いた計算で可能になった。この気象シミュレーションに成功したのは、世界初だという。
竜巻は忽然と発生する特性や直接観測が難しいといった特徴などから、シミュレーションによる予測が困難だったと同大学の坪木教授は説明。2008年から竜巻注意報を運用していたものの、的中率は数%程度で精度が低く、改善が見られない状態だった。
「竜巻(トルネード)は米国で頻繁に起こっている印象が強いですが、実は日本での発生数は米国とほぼ一緒。台風にともない発生する竜巻の割合は約2割と少数ではありますが、特徴的積乱雲(スーパーセル)と呼ばれる、非常に強力な竜巻が起こることが多く、予測技術の必要性が高まっていました」(坪木氏)
今回の開発では、気象シミュレーター「CReSS」を富岳上で大規模並列処理向けに最適化。従来は4時間分のシミュレーションを行う際に666分の時間を要していたが、最適化後はそれが74分に短縮されたとのことだ。
なお、今回の実験では富岳の20分の1にあたる資源を利用。今後は精度向上とともに、竜巻のアンサンブル(集団)予測への発展を目指すという。また、今回開発した富岳版CReSSを、2025年3月までに研究コミュニティ向けに公開予定だとしている。
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