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ぐるなび、「Snowflake×生成AI×アジャイル開発」でリリースを加速化──"2つのサイロ"解消でデータ民主化を実現

ぐるなびのSnowflakeによるデータ活用改革成功事例

 ぐるなびは「データサイロ」と「組織の縦割り」という2つの課題解決でデータ民主化を推進している。Snowflakeを中心にデータを一元化し、プロジェクト型の新体制を導入したことで開発スピードが従来の約20倍に向上。この改革により、AIを活用した会話型店舗検索アプリ「UMAME!」を6カ月で開発・リリースし、Cortex AIとStreamlitを組み合わせた社内データ検索システムも構築。2月25日のSnowflakeの会見で、ぐるなびの岩本CTOがデータ民主化の成功の事例を紹介した。

(左より)株式会社ぐるなび CTO 岩本俊明氏/株式会社ぐるなび 技術戦略室 データサイエンスグループ グループ長 新井駿氏
(左より)株式会社ぐるなび CTO 岩本俊明氏 /株式会社ぐるなび 技術戦略室 データサイエンスグループ グループ長 新井駿氏

データ活用の壁を突破するための基盤整備

 「食でつなぐ。人を満たす。」をパーパスに掲げ、この理念と共に事業を展開しているぐるなび。飲食店の検索サービスとして提供する「楽天ぐるなび(2023年10月に「ぐるなび」から名称変更)」から、飲食店の経営支援を行うサービス、生産者や卸売事業者の販路拡大を支援するサービスまで、最近では幅広く事業を展開している。楽天ぐるなびは、2024年12月時点で2,745万人の会員を抱え、掲載店舗数は約42万店、加盟店数も42,172店と、ぐるなびの基幹サービスに成長している。1996年6月にサイトを開設してからの成長の過程で、ぐるなびのデータ資産は量もさることながら、中身もかなり充実してきた。

食に関わるさまざまな人たちを繋ぐ「ぐるなびネットワーク」 出典:ぐるなび [画像クリックで拡大]

 企業活動におけるデータは、今ではどの企業にとっても必要不可欠な存在だ。とはいえ、ほとんどの企業では、SQLでデータを操作できる専門知識を備えた一部の人たちだけがデータにアクセスできる状況だろう。それでも、一般社員はExcelやPowerPoint、メールなどの利用を通して何らかの形でデータに接しているはずだ。ぐるなびも同じで、岩本氏は、「誰もが新しいビジネスを創出する機会を作りたい」と述べ、全社員がデータを活用できる『データ民主化』を目指し、取り組みに着手した。

 そこでまず岩本氏が取り組みを進める中で直面したのが、データ民主化を実現する上での障壁となる2つの大きな課題である。

  • データのサイロの課題:部署単位でデータを所有している状態
  • 組織のサイロの課題:各部署による独自のSaaSやクラウド利用

「データサイロ」解消のためのクラウド基盤整備

 まず1つ目の「データのサイロの課題」について岩本氏は語った。以前のぐるなびでは、部署単位でデータを所有している状態だったという。1990年代からサービスを展開してきたこともあり、どの部署がどんなデータ資産を所有しているかわからない状態に陥っていたのだ。

 「ここ10年間で各部署が自由にSaaSやクラウドを利用できるようになったことが、データサイロの問題を複雑にした」と同氏は指摘する。たとえば、部署Aのデータ資産には、オンプレミスのデータセンターからホスティングしているアプリケーションのデータとパブリッククラウド上で稼働しているアプリケーションのデータが混在している。さらに、部署BではSaaSのデータとパブリッククラウド上のアプリケーションデータが混在しているといった具合だ。岩本氏は当時を振り返り、「何のアプリケーションをどの部署が使っているかは管理しているが、データレベルでは現状を把握できていない状態だった」と率直に述べた。

 データサイロ解消に向けて2024年から始めたのが、Amazon S3を起点にSnowflakeに全てのデータを集約することだ。ポイントは大きく2つある。1つは、これまで大規模なデータウェアハウスを構築して運用していたものを廃止すること、もう1つが、部署ごとに導入していたBIツールを一本化することだ。

データ資産のサイロ解消に向けて進める基盤の整備 出典:ぐるなび [画像クリックで拡大]

「組織のサイロ」がもたらすデータ活用課題の解決

 2つ目の「組織のサイロの課題」については、成長の過程で縦割りが進み、部門間の連携が不足してしまったことが大きな要因だ。そもそも隣の部署にどんなデータがあるかがわからない。また、複数の部署が同じようなデータセットを使うこともあったという。もちろん、データセットを作る部署は依頼内容に多少の重複があるとわかるが、それぞれの部署の依頼に対応せざるを得ず、データ組織の貴重なリソースを無駄遣いするようなことが起きていた。

 また、データ組織とUI開発組織が別々で、認識の相違が生まれることもしばしばだった。岩本氏の言葉によれば、「赤いリンゴを納品するはずが、データ組織は黒いリンゴ、UI開発組織は白いリンゴを作ってしまう。赤いリンゴにするための帳尻合わせに時間を浪費するようなことが起きていた」という。さらに、新しいデータがどんどん集まるものの、そのスピードにUI開発が追いつかず、現場が使いたいと思った時には、用意したデータが陳腐化してしまうことも悩みの種であった。

 この縦割り組織の課題解決のためにぐるなびが実施したのが、「プロジェクトの立ち上げ」と「MVP(Minimum Viable Product)開発と全ファンクションの集約」の2つになる。プロジェクトには、Webディレクター、プロダクトマネージャー、UIデザイナー、アプリケーション開発、バックエンド開発、SRE、データサイエンティストまでが集まる体制を作った。「以前はそれぞれが別々の組織にいたので、コミュニケーションに時間がかかっていた。新体制になってからは、実感として、かなり無駄なコミュニケーションが減った」と岩本氏は述べた。この体制でMVP開発、すなわち必要最小限の機能を備えたプロダクトをリリースし、ユーザーからのフィードバックを得て、継続的に改善を繰り返す手法に取り組んだ。

縦割り組織の解消に向けての体制の見直し 出典:ぐるなび [画像クリックで拡大]

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Snowflakeとアジャイル開発で「UMAME!」β版リリースを加速化

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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