Snowflakeの生成AI「Cortex AI」を活用した社内データ検索
新井氏は、「営業による飲食店の課題解決」を例に、社内向けに開発したアプリケーションでできるデータ検索の機能を紹介した。
近年、食材費や人件費高騰など、飲食店経営の悩みは尽きない。この悩みに対して、これまでは、営業が担当する飲食店を訪問し、ヒアリングや相談ベースで情報収集から分析、資料作成、提案までを行っていた。しかし、この一連のプロセスを1人で完結することは難しい。やろうとすると、BIツールから目的のデータにアクセスするところから始めなくてはならない。すぐに必要なデータを発見できればいいが、ない場合の方が多く、データサイエンスチームに欲しいデータセットを依頼しなければならない。また、1回で必要なデータセットを得られるわけでもなく、コミュニケーション時間とデータエンジニアリソースの負荷の問題があった。
新しい仕組みでは、ユーザーがStreamlit上のアプリケーションにアクセスし、どんなデータが欲しいか、依頼文を質問の形で入力する。StreamlitがCortex Analystに入力内容を渡すと、Cortex Analystは入力内容を基にSQL文を生成し、アプリケーションに戻す。Streamlit上のアプリケーションは、SQL文を実行し、Snowflake内のデータを取得する。新井氏は、どんなデータが得られるかをデモで紹介した。

デモ用のサンプルデータとして用意されていたのが、楽天ぐるなび掲載の飲食店それぞれの所在地のエリア、料理のメニュー、料理の単価(月単位の推移)である。たとえば、新宿エリアで居酒屋を経営しているオーナーが、食材費の高騰を受け、メニューの値上げを検討しているとする。アプリケーションに「枝豆を価格350円で提供しており、値上げができないか検討しています。新宿エリアの居酒屋の最新相場を知りたい」と入力してみたところ、「平均価格は410円」という回答が得られた。
その回答は、「現状では市場価格より明らかに安値で提供されている。410円という市場価格を考慮すると、値上げの余地は十分にある。段階的な値上げとして、まずは380円への引き上げを検討できる」というもので、Cortex LLMは質問への回答に加えて、考察も提供してくれた。このアプリケーションは社内向けで、「今、この情報を知りたい」というニーズに応えるものと言えるだろう。
この成功を得て、メニューのデータに加えてその他のデータを組み合わせることができれば、より良い提案に向けてもっと深いインサイトを得られると、ぐるなびは期待している。「ぐるなびの各サービスのデータ連携を進めると、そのデータを使うことでもっとぐるなびの全サービスが進化する。データ民主化はAI時代を生き残るために不可欠な挑戦だった」と岩本氏は取り組みの意義を総括した。