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EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

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EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

レガシー刷新の心得

経営に資するIT部門の姿とは?──JFR野村泰一氏は「システムフィロソフィー」の定義で両者をつなぐ

レガシーには“お宝”がある! システムとマインドの変革を同時並行で進める

 市場の変化が激しさを増す中、企業が競争力を維持するためには、素早い意思決定とそれを支えるシステムが欠かせません。しかし、いまだ多くの企業がレガシーシステムの制約に悩まされ、スムーズなデジタル変革を進められずにいます。新たな技術との互換性やデータ移行、業務フローの変更など、様々なハードルが立ちはだかり、コストやリソースの確保も求められるレガシー刷新を成功させるために必要な心得とはどのようなものなのでしょうか。本記事では、大丸松坂屋百貨店やパルコを傘下に持つ、J.フロント リテイリング(以下、JFR)でレガシー刷新を推進する野村泰一氏に成功のための考え方や取り組みについてお聞きしました。

レガシーマインドからの脱却、「ビジネス視点で考えるIT部門」へ

——野村さんはどのような経緯でレガシー領域に関わることになったのでしょうか?

 もともとJFRのIT領域は、データ活用とデータ人財の育成を推進する「デジタル部門」と、インフラや共通システム、セキュリティなどを担当する「IT部門」に分かれていて、私はデジタル部門で主にデータドリブン経営のための取り組みを主導していました。具体的にはデータ人財育成のためのプロセス設計と教育プログラムの開発、運用です。

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 この取り組みが軌道に乗り始めた2024年、2つの部門が統合され、新たな統括部が発足。これを機に、IT部門の部門長に任命され、IT部門の改革に本格的に関わるようになりました。IT部門では、「業務に臨む共通のマインド」を醸成することと、「ITガバナンスを整備し、ITロードマップを描き、アーキテクチャを設計すること」に取り組みました。

 そうしたことを進めていたところ、2025年3月の組織再編でDX推進部が発足し、部長に就任。これからはデジタル部門とIT部門が担っていたデジタル推進と戦略・ガバナンス、システム企画を統合し、一体となって「経営をITで支える体制」の構築を目指しています。

——IT部門にはどのような課題があったのでしょうか?

 私が感じた第一印象は、誰もが一生懸命、仕事に取り組んでいるのに、バラバラに取り組んでいるためにIT部門として一貫性のある施策になっていない、というものでした。部員はシステム案件単位でタスクを担っているため、まるでプロジェクトがサイロのようになっている状態。経営から見ても案件ステータスだけが共有される“よくわからない部門”だったと思います。

 会社にとって大事な仕事をしているにもかかわらず、案件に関わっている人以外には「IT部門はやたら忙しそうだけど、何をやっているのかよくわからない」というように見えてしまいがちだったのです。

——IT部門のレガシーマインドを変えるためにどのような施策を実施したのでしょうか

 スタッフに対しては、最初にデザイン思考の講座を実施しました。これはデータ人財育成の際に開発したプログラムを活用したもので、「個々で努力するよりも、チームとして協力しながら課題を解決する方が、よりよい成果につながりやすく学びも多い」という考え方を伝えることが目的でした。

 このようにIT部門に「同じ方向を向いてチームで取り組むことの意味」を理解してもらった上で、IT部門として最初に取り組んだのがガバナンスです。

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 これまでは規定やルールの整備がメインだったところにプロセスを加え、統制が効くような流れをどう作れば良いかをチームで議論しました。自分たちが考えたプロセスで統制が効くようになると、ガバナンスも良くなるし、もっといろいろ考えてみようという気持ちになるだろうという思惑がありました。

 こうした取り組みによって、関係する部署から見ても、予算の執行状況や今後の見込みがわかりやすくなって、IT部門のやっていることが他の部門に理解してもらえるようになるわけです。そうすると事業会社との間に信頼関係が生まれ、コミュニケーションが活性化してくる。そこからITロードマップのイメージが見えてくるんです。

経営に資するIT施策にすべく「システムフィロソフィー」を定義

——マインドの醸成とガバナンスの整備で変革の土台を作った上で、経営を意識した取り組みにシフトしたのですね

 ガバナンスの強化は重要ですが、それだけでは従来のIT部門の役割を果たしているに過ぎません。サイロ化していた状態が横断的になっただけで、経営から見ると、まだ「システムを作っているだけの部門」にしか見えない。真の意味で「経営を意識したIT施策を考える部門」にはなっていないのです。そのため、次のステップでは経営とITを結びつける必要がありました。

 一般的に、経営とITを連携させるためには、企業のITシステムとビジネス戦略を整合させ、全体の最適化を図るための設計手法である「EA(エンタープライズアーキテクチャ)」に基づくビジョンを描き、経営陣に説明することが必要です。しかし、IT用語やルールに寄ったEAより、もう少し“思想”寄りなアプローチの方が経営陣の理解を得られるのではないかと思ったのです。

 そこで思いついたのが、まずは誰にでも理解でき、共感を得られる「経営とITの共通のものさし」を作ろうということでした。それを示すための言葉として考えたのが「JFRシステムフィロソフィー」です。「人や組織の判断や行動を支える土台」という意味を持つフィロソフィーと、システムを組み合わせた造語なのですが、自分でもとてもしっくりきましたし、広く理解してもらえそうな予感がしていました。

 JFRシステムフィロソフィーは、次のように定義しました。

「共通のインフラの上で、各業務システムは可能な限り共通システム化をする。また、ID管理された顧客情報を含め、社内の情報はデータ基盤に蓄積され、グループ全体で活用される」

 この考え方は、JFRの中期経営計画が掲げる「ホールディングスとしてのシナジーを最大化する」という方針に沿ったものです。このフィロソフィーに基づいてIT施策を考えれば、自然と経営視点を取り入れた施策にすることができます。

 経営会議で発表したところ、経営層から良いリアクションが得られ、以降のIT施策は「JFRシステムフィロソフィーに沿っているかどうか」で判断しようということになりました。

——どのようにしてJFRシステムフィロソフィーを社内に浸透させたのですか?

 JFRシステムフィロソフィーを社内に浸透させるため、まず全社への発信を行いました。事業会社の経営層が集まる会議やガバナンス会議で説明し、社内ポータルを活用して社員にも広く伝えました。

 この発信に対して、経営層からは「意識を統一するのに便利」という声が挙がったり、事業会社からは「詳しく知りたいのでレクチャーしてほしい」という要望が寄せられたりと、好意的な反応が多かったです。そうすることで徐々に「IT部門の取り組みは、経営が目指すホールディングスのシナジー効果を高めるためのものだ」という理解が社内に広がっていきました。

 さらに、アーキテクチャの見直しやシステム案件の審査時にフィロソフィーを基準に据えることで、部門間の相互理解も進みました。意見が対立した際にも、「フィロソフィーに照らし合わせるとどうか」という視点で議論を進めることで、意見がまとまったケースもあったようです。フィロソフィーは、ともすれば対立しがちな経営とITの間にある溝を埋め、一体化させていくのに役立つようになっていったのです。

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JFRにおけるシステムのあり方を示す「JFRシステムフィロソフィー」

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IT部門の“手の内”にあるインフラ整備から着手

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この記事の著者

後藤 祥子(ゴトウ サチコ)

フリーランスの記者、編集者。前職のアイティメディアではITmedia エンタープライズの担当編集長としてメディア運営のほか、特集企画、記事執筆、タイアップ企画、セミナー企画、情シス コミュニティー「俺たちの情シス」の運営などを担当。2020年に独立し、各種メディアでイベント企画や取材活動を行っている。信条は、「変化の時代に正しい選択をするのに役立つ情報を提供すること」と「実務者が真に知りたいことを実務者の視点で伝えること」。Gallup認定ストレングスコーチ...

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