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業界の常識を覆し続ける星野リゾート、次は「ホテル運営システム」を内製──現場出身者×エンジニアの融合

第35回:星野リゾート 情報システムグループ テクノロジー研究開発ユニット 佐藤友紀子さん

手厚い顧客サービスの裏にある、縦割り業務の“マルチタスク化”

酒井:他に、佐藤さんが携わった思い出深い取り組みはありますか?

佐藤:そうですね、1990年代後半に導入した「サービスチーム」は特に印象深いです。それまでのホテル業界では、フロント、レストラン、客室清掃、調理と業務が細分化されているのが一般的でした。いわゆる「縦割り」です。

 当社はその垣根を取り払うことにして、一人のスタッフが複数の業務をこなすマルチタスク化をいち早く実現したんです。たとえば朝6時から勤務するスタッフは、レストランでの朝食調理・サービスから始まり、フロントでチェックアウト業務、その後、客室清掃を担当したのち15時に退勤。また別のスタッフは、午後に出勤し、チェックイン対応、そして夕食サービスを担当して終了といった具合に、一日の中で様々な役割を担います。

 これにより、お客さまはチェックインからチェックアウトまで、同じスタッフによる一貫したサービスを受けられるようになりました。お客さまにとって、よりスムーズで質の高いサービスを提供するための、私たちにとって大きな挑戦でした。

久本:マルチタスク化の最大のメリットは、お客さまとの接点が増えることです。全工程を通して担当することで、気付きや業務改善のポイントが見えて、それを顧客満足度向上のための様々な施策につなげられるようになりました。星野リゾートの競争力の源泉はサービスチームにあると言っても過言ではないと思います。

酒井:非常に合理的で良さそうに思えるのですが、そもそも他のホテルでできないのはなぜでしょうか?

久本:理由は大きく3つあると思います。まず、セクションごとに業務が最適化されているのがホテル業界のスタンダードだからです。そして、セクショナリズムが強く、部署間にヒエラルキーが存在する場合もある。さらに、それぞれが専門的な業務なので、すべてを習得するのは簡単ではありません。

 コロナ禍で少ないスタッフで対応するためにマルチタスクを始めたホテルもありますが、私たちが「サービスチーム4種目」と呼んでいるフロントサービス、レストランサービス、客室清掃、調理のすべてをマルチタスクでやっているところは、今も他にはないと思います。

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星野リゾート 情報システムグループ
グループディレクター 久本英司さん

佐藤:私が現場にいたときも、各セクションの業務を洗い出し、組み合わせを検討しながら、試行錯誤してシフトも何度も作り直しましたね。たとえば、制服も工夫し、フロントではジャケット着用、レストランシフトへ移動する際はベストのみにするなど、マルチタスクシフトをいかに効果的にまわしていくか、細部まで最適化していきました。今もなお、現場のスタッフの創意工夫により、サービスチームという働き方は進化しています。

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汎用パッケージで感じた限界……コアを内製で作ることを決意

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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