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業界の常識を覆し続ける星野リゾート、次は「ホテル運営システム」を内製──現場出身者×エンジニアの融合

第35回:星野リゾート 情報システムグループ テクノロジー研究開発ユニット 佐藤友紀子さん

汎用パッケージで感じた限界……コアを内製で作ることを決意

酒井:現在は、Web予約システムを含むホテル運営システムの内製開発に邁進中とのこと。現行システムにはどんな課題があるのでしょうか?

佐藤:当社だけでなくホテル業界では、予約や客室管理、売上といった情報を一元管理する基幹システムとして、以前からPMS(ホテル管理システム)が広く使われています。しかし、当社は客室をご利用いただくだけでなく、レストランやアクティビティ、スパなど多様なサービスも提供しているため、PMSだけでは管理しきれなくなっていました。

 さらに大きな問題は、施設が使うPMSと、お客さまにご利用いただくWeb予約システムが分断されていたことです。お客さまにとっては「ホテルを探し→予約→滞在前にレストラン予約→チェックイン」というのは一連の体験です。しかし、システムの裏側では複数の仕組みがバラバラに動いており、いまだにコピー&ペーストで情報を転記するような作業も残っているのが実情です。

酒井:今もですか!? もっとスムーズなのかと思っていました。

画像を説明するテキストなくても可
ノンフィクションライター 酒井真弓さん

久本:すごくアナログです。ホテル業界は、もともとシステムが分断した状態でスタートしてしまった業界なんです。PMSが誕生した1950年代は、旅行代理店が集客やマーケティングのすべてを担い、ホテル側は接客と施設管理に注力するといったように役割分担されていました。

 その後、インターネットの普及でオンラインの旅行代理店が台頭し、Web予約が一般的になりました。しかし、あまりにも多くのホテルと旅行代理店が存在するため、システム連携が非常に複雑になっています。共通のインターフェースが確立されておらず、国や地域によってシステムがバラバラです。

 その結果、1つのホテルで10ほどのシステムを使うような状況になり、連携できてないので手作業でのコピペが頻発しています。

酒井:それでは顧客体験に影響が出てしまいますね。

佐藤:そうなんです。一度予約したものを変更するのも自由にできなかったり、宿泊予約はリッチなページなのに、オプション予約になると急に簡素な画面になったりと、一貫性のない体験になってしまっています。

久本:私たちも、これまでPMSの根幹部分まで自社で開発するという決断には至っていませんでした。その複雑さから、まずはWeb予約システムに注力してきたのです。しかし、理想とする顧客体験を提供するには、もう一歩踏み込む必要がありました。

 ここで大きな原動力となったのが、当社は各施設の公式サイト経由の集客比率が非常に高いという事実です。公式サイトを通じて予約するお客さまが多いということは、そのサイト内で様々な顧客体験を創出できる可能性が広がることを意味します。

酒井:なるほど。仮に公式サイトでの集客比率が低ければ、せっかく機能を開発してもユーザーが少なく、費用対効果の面でも決断が難しくなりますね。星野リゾートに泊まりたいという「指名買い」のお客さまが増えるように努力されてきた結果だと思います。

久本:今回、内製でのシステム刷新に踏み切れたのは、もちろん既存システムへの課題もありましたが、この高い自社予約比率があったからこそ、「今ならできる」と判断できたのです。

酒井:新しいホテル運営システムでは何を目指しているのでしょうか?

佐藤:一番の目標は、やはりシステム分断による煩わしさを解消することです。現状では、予約担当者が空室情報はPMSで、料金情報は別システムで確認するといった具合に、複数のシステムを行き来しながら対応しています。これを「1つのアプリケーションですべて業務が完結する」ことを目指して取り組んでいます。

 また、マニュアル不要のユーザーフレンドリーなインターフェースにもこだわりたい。統合予約ユニットでは現在、国内外70施設以上の予約業務を担当しており、業務知識だけでも膨大です。その上、システムまで複雑だとスタッフの負担が大きくなってしまうのですよね。楽に楽しく業務できるシステムにしていきたいと思っています。

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エンジニア×現場経験者の「相互尊重」で築く、内製チーム

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

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