業務に詳しい人がヒーローになる。3年間で起きた価値観の転換
このようにして3年間、DX組織へ変革するために人材育成を進めてきた丸井グループ。ここまでを振り返ったとき、最も印象的だったのは、DXを推進する「ヒーロー」に変化が生じたことだったという。原田氏は、ライフイズテックが示した3つのDX──空想のDX(世の中にない新しいビジネスを創造)、事業のDX(既存ビジネスをデジタル世界に融合・再構築)、業務のDX(既存業務の最適化・生産性向上を実現)──をベースに、これまで3回行われたアプリ甲子園の変遷をこう振り返った。
「1回目は新社員が優勝しており、これは新規事業寄りの『空想のDX』の発想によるアイデアでした。2年目は先輩社員による『業務のDX』が勝ちました。そして3年目に優勝したのは『事業のDX』。これも先輩社員がリードする形となりました。業務を分かっている先輩社員たちが優勝してヒーローになってくれたのはうれしいですね」(原田氏)
原田氏は加えて、この3年間で大きく変化したこととして「日々の業務を自分たちで解決できるのではないかという意識が生まれたこと」を挙げる。「目の前の事業や業務をデジタルで解決しようとする風土がグループ全体に根付いてきていると感じます」と話し、デジタルを“活用する側”への意識転換が組織の隅々まで浸透していることを示した。
特に印象的だったのは、新入社員がアプリ甲子園で優勝した後の社内の反応だったと原田氏。50代の社員が、アプリ甲子園で若手のポテンシャルを実感できたことをきっかけに、人事施策として進めていた若手の昇進を促進する制度の導入を後押してくれたのだという。DXを通じた若手の活躍が、社内の雰囲気も大きく変えていったのだ。

相田氏はこれらの取り組みの手応えについて「チャレンジすることが当たり前といった風土が醸成されてきていると感じます。アプリ甲子園をきっかけに、実際に実装段階に入っているプロダクトも出始めていて、今後それが少しずつ増えていくことが重要だと考えています」と述べた。
小森氏は、DXの推進において本質的に重要なのは「志」だと強調する。技術はあくまで手段に過ぎず、「デジタルができる人とそうでない人の分断ではなく、皆さんがマインドをもって組織変革を進めていくことが重要だと思います」と強調し、講演を締めくくった。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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