DX組織に必要な変革のフレームワークとは? カギは3つの人材タイプ
原田氏は研修導入時に人材開発課長として現場を統括し、3年間の変革プロセスを人事の視点から支えてきた人物だ。小森氏は、ライフイズテックでDX事業部の立ち上げを担当し、中高生向けプログラミング教育で培った知見を企業のデジタル人材育成に応用する取り組みを推進している。異なる立場の3人による議論は、組織変革の設計思想から実践上の課題まで、多角的な視点を提供した。
まず小森氏が提示したのは、DX組織に必要な3種類の人材を整理したフレームワークだった。

上図の青色で示された部分は、イシューを明確にし、理想と現実のギャップを埋めるための課題設定を担う組織内の「デジタルマネジメント層(全体の10〜20%)」。黄色の層は、その課題をもとに実際にシステムを構築し、実装していく「デジタルプレーヤー層(20〜30%)」。この層が解決策を作って実行するDX人材にあたる。そして赤の層が、構造的にイシューを理解してフォロー・運用できる「デジタルフォロワー層(50〜70%)」。この層にあたるのは、たとえば営業であればSalesforceのようなツールに実際にデータを入力し、AIの活用も含めて日々の業務でツールを使いこなしていく現場のメンバーだ。それぞれの層が連携しながら、組織全体でデジタル活用を進めていく構造になっていることを小森氏は説明する。
このフレームワークで重要な点は、3つの層を結ぶ緑色の矢印が示すコミュニケーションの流れ。青の層が黄色の層に課題を伝達し、黄色の層は解決策を赤の層に提供する。そして赤の層はそれを活用した結果を青の層にフィードバックしてまた新たなイシューを設定するというサイクルだ。
小森氏は「青の方が黄色の方にいかに適切に課題を伝達できるか、デジタルの共通言語で解像度を高めた上で、このコミュニケーションのサイクルを回していけるのかが重要だ」と指摘。単に人材を配置するだけでなく、相互の連携と理解が適切に機能するかどうかが成否を分けると強調した。

丸井グループは当初、イシューさえも描けていない状況からの出発だったという。まずはマネジメント層(青の層)から意識を変えるべく役員研修から開始したことも、この戦略的判断に基づいている。
このような段階を経てDXを進めやすいアジャイル開発を浸透させていく中で、相田氏は次の点を意識したと話す。
「アジャイル開発が重要である一方、クレジットカード情報を守る情報システムとして、安全・安心な運用をウォーターフォール型で重ねてきた背景もあり、そうした領域に携わるメンバーも少なからずいます。そのため、アジャイルとウォーターフォールを2項対立にせず、適材適所で活用することを意識していました。アジャイルがすべてを解決するわけではなく、状況によってはウォーターフォールが必要な場面もあるという前提で議論を進めています」(相田氏)
新旧の手法を対立させず、適材適所で活用する姿勢が、組織の分裂を防ぎ、緩やかな変革を可能にしたのだ。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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