MUFG、スクウェア・エニックスなどが進める“着実な”システム基盤刷新:クラウドシフトで見据える未来
「HashiCorp Do Cloud Right Summit Tokyo」レポート
2025年7月17日、HashiCorpは年次イベント「HashiCorp Do Cloud Right Summit Tokyo」を都内で開催。同社の最新技術が発表されたほか、ユーザー企業4社が登壇しHashiCorp製品の活用事例を紹介した。各企業がクラウド環境の構築・運用においてどのような課題に直面し、それを解決に導いたのか。その全貌が明かされた。
IBM、Red Hatとの連携拡大でもたらされる効果
イベント冒頭、HashiCorpで営業責任者を務める伊藤健志氏、Head of Japan SEを務める小原光弥氏が登壇し、同社のプロダクトの現在地を紹介した。現在、HashiCorpは7つの商用版プロダクトを提供している。インフラ分野では「HashiCorp Terraform」「HashiCorp Packer」「HashiCorp Nomad」「HashiCorp Waypoint」、サイバーセキュリティ分野では「HashiCorp Vault」「HashiCorp Boundary」「HashiCorp Consul」が提供されており、どれも広義のクラウド環境構築や運用業務を簡素化することで、ユーザーが本来の業務に集中できるようにすることをコンセプトにしたものだ。
2025年上半期のテクニカルアップデートのなかで、特に注目すべき製品はVaultシリーズの「HCP Vault Radar」だという。これは、GitHubやJiraなどをスキャンし、コードや履歴に埋もれているシークレットを検出するレーダーの役割を果たす。過去に第一弾をリリースし、2025年4月にあらためて一般提供を開始した。
また、IBMに買収されたことにより、同社は今年新たなスタートを切ることとなる。今後は、IBMやRed Hat製品との連携が広がっていくだろう。その動きは既に見受けられており、たとえば2025年5月にアメリカで開催されたイベント「IBM Think 2025」では、アプリケーションリソース管理ソリューション「IBM Turbonomic」とTerraformの連携が発表された。これにより、Terraformでの環境構築だけでなく、構築後の運用とリソース最適化にまで自動化を広げられる。
加えて、HashiCorpの管理対象も広がることになる。HashiCorpプロダクトの管理対象は、オンプレミスのハイパーバイザーも含まれているものの、基本的にはクラウドだった。そんな中、2025年3月には「Terraform for Z」「Vault for Z」「Nomad for Z」、メインフレーム向けライセンスが発表され、IBM z/VMやRed Hat KVMベースのLinux仮想マシンでHashiCorpプロダクトを活用できるようになった。
Red Hat関連では、「Ansible」とTerraform、「OpenShift」とVaultで連携が広がる。これまでもAnsibleとTerraformは場面ごとの使い分けがカギとなっていたが、連携が強化されたことで、Terraformがインフラを、Ansibleが設定レイヤーを司るといった形で使い分けが明確になった。実際のユースケースとしては、Amazon EC2をTerraformで構築し、立ち上がった後のOSレイヤー以降をAnsibleで管理するといった使い方ができる。
HashiCorpは、「Tao of HashiCorp」と称される哲学を持っている。同社のビジョン、開発ロードマップ、プロダクトデザインの基礎となる哲学が8つのキーフレーズでまとめられており、そのなかでも小原氏は「Workflows, not technologies」というキーフレーズを紹介した。これは、プロダクトありきで考えるのではなく、顧客が業務をどう変えたいのかをもとに適切な機能を創造していくべきという概念だ。
「HashiCorpはIBMの一員になったが、我々のプロダクトを中心にお客様に提供、提案することは変わらない」と伊藤氏。その後、イベントでは4社の導入事例が発表された。
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加山 恵美(カヤマ エミ)
EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:HashiCorp Japan株式会社
【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
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