マルハニチロは「Umios」へ──次の100年に向けた「カルチャー変革」の波に乗って変わり続ける
第38回:マルハニチロ 執行役員 古田昌代さん
現社長が放った「なんかおかしくないか?」で原点回帰
酒井:2024年に続けて、今年も「DX注目企業」に選出されました。経営層の強力なコミットも評価されたようですね。
古田:2017年まで遡りますが、現社長の池見賢(当時は管理・コーポレート部門担当役員)が海外勤務からら本社勤務となり一言、「この業務フロー、なんかおかしくないか?」と。そこから池見社長に手書きの円グラフを見せられ、「ここの業務はもっとこう改善できるよね?」と言われました。当時はコーポレート部門の改革意識が足りず、「これでは会社が変わらない。社員もワッと驚くような、一番効果のあることをやろう」ということになり、経費精算業務の統制に着手し、全社の業務標準化と合わせて、人事制度も変えました。
当時、経費精算は手書きだった上に、出張に行った社員の経費精算を近くの事務担当の社員がサポートするといった慣習がまかり通っていました。これっておかしいよねということで、各部バラバラだった精算業務を統制することに。SAP Concurを入れ、精算は自分で行う運用に2年かけて変えていきました。当社はカスタマイズが大好きで、会計システムのSAPも多くがカスタマイズなのですが、Concurは標準仕様に業務を合わせていくよう促しました。
そのため、やり方が変わることへの社員のハレーションはすごかったですよ。今までは精算に不備があっても事務担当の社員が直してくれたのに、これからは自分でやってくださいって話ですからね。
酒井:経費精算をサポートしていた事務担当の方々はどうされたんですか?
古田:自分の仕事ができると喜んでいましたよ。ただ、空いた時間を他に振り向けてくださいと言っているんですが、その振り向け方が正しく稼働できたかは、今再評価しているところです。
酒井:どう振り向けたら「成功」と言えますか?
古田:その事務担当だった社員のみなさんが生き生きと働いていたら成功です。

酒井:本格的なDXを前に守りを固めたことで、DXがうまくいったという側面はありますか?
古田:なぜ守りのDXから着手したかというと、守りのほうが着手しやすいからです。攻めの施策は、すぐに成果が出るとは限らない。一方、守りは目の前のことなので、成功か失敗かが自己判断できる。つまり、社員一人ひとりが「これはうまくいったな」と小さな成功体験を積むことで、自分でも変えられるんだという自信が生まれてくるんです。これがないと、攻めのDXはうまくいきません。
私たちがずっと言い続けているのは、DではなくX、トランスフォーメーションをやり続けましょうということです。Xをやり続けると、自ずとDもついてくるんです。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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