マルハニチロは「Umios」へ──次の100年に向けた「カルチャー変革」の波に乗って変わり続ける
第38回:マルハニチロ 執行役員 古田昌代さん
工場勤務の若手が“お試し勤務”? 「本社だけ」と言わせない
古田:2024年からは、「社員が主役のカルチャー改革」をテーマに、社長の池見が現場の社員と対話するタウンホールミーティングを実施するということで、社長に私が同行し全国の拠点を回りました。
酒井:現場からはどんな声が?
古田:「古田さん、本社だけで盛り上がっているよね」「私たち地方拠点は置いてけぼりだよね」とか。そんなことないよと言いながら、たしかに物理的な距離はあるから熱は落ちていくのも感じていました。「この機会に全部想いをキャッチアップしましょう」ということで、そこからみんなの思っていること、やりたいことを出してもらったんです。それらを元にカルチャー改革にまつわる様々な分科会を立ち上げました。分科会の参加は基本的に上司の許可が不要な公募制で。あくまでも社員が主役です。
もう一つ、当社は縦割りが非常に強く、「経営上は変革をと言うけれど、部署異動もしたことがないのに、どうしたらいいの?」という声も挙がっていました。そこで、すぐに他部署体験をスタートさせました。いきなりすべての部署で行うのは難しいので、2024年下期に14部署の部署長に受け入れの協力を依頼し、公募をかけたら100人が応募。たとえば、経理部門から養殖場に行ってマグロを取り上げ出荷したり、工場でフォークリフトを操る若手がDX推進部で「ネクタイは成人式以来です」と言いながらパソコンを触り、社内のITの問い合わせ対応をしたりと様々。もともと転勤のないエリア職ですが、本社の空気を感じたことで「総合職になりたい」と言い始めている社員もいます。2025年度の他部署体験は、受け入れ部署も部署長の挙手制とし44部署に一気に増加しました。
酒井:その人のキャリアプランにも大きな影響を与えているんですね。
古田:実はこのカルチャー改革に、社名変更や本社移転も絡んでくるのです。145年続いた会社がこの先100年続くために、本社をイノベーションの集積地・高輪ゲートウェイに移し、多様なパートナーや研究機関と協力して食の可能性に挑みます。
新社名「Umios」にもビジョンが込めています。海(umi)は、マルハもニチロも創業時は海から始まった。O(one)は世界の一体化、S(solutions)は食を通じて地球規模の社会課題を解決するソリューションカンパニーになりたい。2026年秋には、新業態として魚介類を中心としたレストランを「NEWoMan高輪」にオープンする予定です。
酒井:めちゃくちゃ行きたいです!
古田:ぜひいらしてください! こちらのレストラン開発の分科会メンバーは、社内公募で一番人気だったんですけど、今まさにどういうお店にするか議論しているところです。ステークホルダーの皆さんにはいろいろな思いがあると思いますが、まずは当社の本気度を分かっていただく場所にしたいとメンバーは躍起になっています。やっと温まってきたこの波に乗り続けるしかないと思っています。
酒井:海だけに(笑)?
古田:でしょう? 「波に乗ろう」と言ったとき、社名に海がついているとありがたいですよ。目指すところが見えやすくなりました。

直営店舗「マルハニチロプラザ」にてお気に入りの商品を手に
(※本社移転のため2025年11月28日をもって閉店)
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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