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IVIと図研・NEC・電通総研が描く「日本版インダストリー4.0の第2幕」──IVI設立10周年イベント

一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)設立10周年記念セミナー

インダストリー4.0の成果と残された課題─現在進行形の変革

 各社のプレゼンテーションを受け、西岡氏のモデレートによる議論が展開された。西岡氏が「インダストリー4.0は何だったのか」と問いかけると、3者は共通して「過去形ではなく、現在進行形の取り組みである」との認識を示した。

 西岡氏は「ドイツでは、日本でいうDXとはインダストリー4.0のこと。産業界が進むべきビジョンであり、今なお我々はその渦中にいる」とコメント。これを受けて杢田氏は、「当初はIoTなどの『手段』が先行したが、ようやく『何のためにやるのか』という目的と結びつき、個別企業での成功事例が出始めた。これからはそれらを横に繋ぐフェーズだ」と分析。日本的なボトムアップ・アプローチで、ものづくり全体が良くなっていく時期に来ているとの見方を示した。

 尾下氏は、「インダストリー4.0をきっかけに、部分最適であっても現場の『見える化』が進んだことは大きな成果」と評価。その上で、「次はその部分最適で得られたデータを統合し、全体最適につなげることが重要。ChatGPTのように誰もが自然に使えるAIの登場が、その動きを加速させるだろう」と、次なるステップへの期待を語った。

製造業DXの核心、「BOPによる標準化」は可能か─すり合わせ領域のデジタル化

 次に、西岡氏は「個別受注や変種変量生産といった、日本が得意とする『すり合わせ』領域を、いかにデジタルで効率化し、競争力に変えるか」という、より具体的な課題を提示。その鍵として「BOP」と「標準化」を挙げ、各社の見解を求めた。

  杢田氏は、「変種変量生産が当たり前になった今、業務とITの仕組みをいかにシンプルにできるかが勝負。そのためには、ペイできる投資に見合う、標準化されたシンプルなモデルが必要だ」と述べ、設計手法から業務プロセスに至るまでの標準化が不可欠だと強調した。

 尾下氏は、開発・設計段階で品質とコストがほぼ決まってしまう現実を指摘し、「物がない状態でいかに検証できるかが重要。そのためには、現場の知見を設計にフィードバックする必要があり、その連携の要がBOPだ」と改めてその重要性を説いた。

 一方で、メカ領域における標準化の難しさについても議論が及んだ。上野氏は「エレキと違い、メカの標準化は非常に難しい。日本は現場の工夫でコストやリードタイムを圧縮しており、トップダウンの標準化は馴染まない可能性がある」と慎重な姿勢を見せた。

 これに対し尾下氏は「自動化すべき領域と、人の技能に頼るべき領域を見極めることが重要。量産品と少量生産品では、求められる標準化のレベルも異なる」と答え、一律ではない、状況に応じた標準化のアプローチが必要との考えを示した。

日本のソフトウェアは世界で戦えるか?新概念「BOA」への期待

 最後に、西岡氏は「デジタル赤字が拡大する中、日本のソフトウェア産業はどうすれば世界で戦えるのか」という根源的な問いを投げかけた。そして、IVIが提唱する新たな概念として、従来のBOM/BOPに加え、設備や人といった資産情報を構造化した「BOA(Bill of Assets:設備構成表)」を提唱する。この日本発のモデルで世界に打って出る可能性を問いかけた。

  BOAとは、「ゆるやかな標準」のコンセプトに基づいて生産側の情報を統一的に表現し、これを BOP とともに製品のモデルと関係づけることで製造業PLMを実現させるものだ。

 「日本は設備や設備管理、TQCなどで現場が強いが、それがソフトウェア・デジタル化になっていない。BOAをBOPと連携させることで製造業PLMを実現し、国際標準化を目指す」(西岡氏)

(出典)Industrial Value chain Initiative(IVI) [画像クリックで拡大]

 この製造業PLMの実現により、市場の急速な変化への対応不足、設計情報や資産の再利用不足、生産設備やラインの投資対効果の見える化不足、製品や工程のバリエーション増加による生産性低下といった経営課題の解決が期待される。

 3者からは期待の声が上がり、図研の上野氏は「日本の現場力をデジタル化できれば、確実に世界で戦える武器になる」と述べ、NECの杢田氏は「BOAによる資産情報の構造化は、製造業の次世代プラットフォーム構築の鍵となる」とコメント、電通総研の尾下氏は「AIエージェント時代を見据えると、BOAの標準化は必須の取り組み」と応じた。

 インダストリー4.0の提唱から10年を経て、日本のものづくりが次なるステージへと向かうための重要な羅針盤となる議論が交わされた。理論と実践の融合、中小企業と大企業の協調、そして日本の現場力をデジタル化した世界標準の創出──これらのキーワードによって日本の製造業DXの未来を切り拓く方向性が示されたと言える。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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