なぜMUFG、ソニー、セブン&アイはGoogleのAIを選んだのか?── Google Cloud幹部が語る日本企業との「共同のイノベーション」
Google Cloud Next Tokyo 2025 レポート/アンディ・ガットマンズ氏独占インタビュー
金融業界の未来図を描くMUFGの大胆なデジタル戦略
金融業界においては、三菱UFJフィナンシャル・グループが業界をリードする変革を推進している。同社の山本忠司執行役常務が発表した新サービスブランド「MUFG ONE(M.O.N.E)」とデジタルバンク構想は、金融サービスの概念そのものを塗り替える野心的なアプローチだ。
「お金のあれこれ、まるっと。」をキーワードに、顧客の金融生活全体をサポートする包括的なサービス展開を目指している。この構想の実現において、山本常務は「銀行の中核である勘定系システムのフルクラウド開発において、絶対に妥協できない要件があった」と振り返る。
その要件とは「万が一、ゾーンレベルの障害があってもサービスが止まらず、データの整合性が損なわれない」という金融機関としてのクリティカルな条件であった。この厳格な要件を満たすCloud Spannerの存在が、Google Cloud採用の決定打となったと説明した。
2026年度中のデジタルバンク開業を目指す同社では、WealthNaviと共同開発する「総合アドバイザリー・プラットフォーム」(MAP:Money Advisory Platform)において、MUFGグループ約6,000万人の顧客データとAI技術を活用した個別最適提案の実現を計画している。これは従来の金融サービスの枠を大きく超えた、パーソナライゼーションの新たな地平を開くものとなるだろう。
小売DXの最前線を駆けるセブン&アイの次世代システム革命
小売業界におけるDXの最前線では、セブン&アイ・ホールディングスが圧倒的な存在感を示している。同社の西村出常務執行役員が紹介した次世代店舗システムは、2万1,000店超のセブン-イレブンを支える壮大なプロジェクトだ。
西村常務が解説する「セブンセントラル」は、BigQueryをメインとして2020年に構築された基盤である。しかし現在展開中の次世代店舗システムは、さらなる進化を遂げている。従来各店舗にあったストアコンピューターのデータとロジックを全てクラウドに移行する全面クラウド化を実現しているのだ。
このシステムが支える取引量は膨大である。高性能データベースを活用し、「セブン-イレブンAIライブラリー」を構築することで、蓄積されたデータをフル活用するAI基盤も整備されている。加えて、API管理ソリューションのApigeeによるAPI連携でスピードとガバナンスを両立させることに成功したと報告している。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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