ハードウェア認証セキュリティキーのプロバイダーであるYubico(ユビコ)は、世界9ヵ国1万8000人を対象に実施した年次調査『グローバル認証状況調査 2025』の結果を発表した。
AI脅威への認識は急上昇、しかし対策は追いつかず
生成AIの進化によるサイバー攻撃の巧妙化を受け、日本でもAIを脅威と認識する声が急速に高まっているという。以下のような意識の変化が見られたとのことだ。
- 「AIが個人・企業アカウントのセキュリティに脅威を与える」と回答した人:2024年は31% → 2025年は74%に倍増
- 「AIによってフィッシング攻撃が高度化している」と感じる人:2024年は46% → 2025年は71%
- 「AIの影響でフィッシング成功率が上がった」と認識する人:2024年の37% → 2025年は42%
この急激な意識変化は、世界的なトレンドと一致はするものの、具体的な対策は大幅に遅れているのが実情だという。なかでも、日本の意識の変化は9ヵ国中で最大となっており、スウェーデン(+31ポイント)、英国(+20ポイント)、米国(+16ポイント)などを大きく上回っているとのことだ。
安全な認証方法の理解も浸透せず
Yubicoが提供する認証セキュリティの分野においては、以下のような課題が確認されたという。そのうえで同社は、パスワードやSMS認証と比較し、物理的なハードウェアセキュリティキーは、AIが関与する高度なソーシャルエンジニアリングやフィッシングにも耐性を持つ認証手段だとしている。
- パスキーの認知度が極めて低く、26%が「パスキーを聞いたことがない」と回答
- クラウド型とハードウェア型パスキーの安全性の違いを理解している人は少数
- より安全なハードウェアキーの使用率はわずか24%
- ハードウェアキーが「最も安全な認証方法」と正しく認識した人は34%
個人利用も進まず、日本は世界最低水準に
個人アカウントでのMFA(多要素認証)利用率は改善されつつあるものの、依然として世界平均との差は大きい状況とのことだ。日本では37%(2024年の18%からは倍増)であったのに対し、グローバル平均は63%にのぼるという。
また、注目すべきは「日本企業の60%がサイバーセキュリティ研修を実施していない」事実だとしている。これは、グローバル平均(40%)を大幅に上回る水準であり、企業文化としてのセキュリティ意識の未成熟さを示しているとのことだ。
世界との比較:フランスは1年で42ポイント上昇
たとえばフランスでは、個人のMFA利用率が1年で29% → 71%へと向上。対照的に、日本の成長は緩やかで、世界標準からの「取り残され感」が顕著になりつつあるとしている。
Yubicoからの提言:今すぐ取り組むべき3つの対策
Yubicoは、以下3つの対応を早急に検討するように、日本企業に強く呼びかけているという。
- MFAの全社導入(最低でもグローバル平均の48%を目指す)
- セキュリティ研修プログラムの即時導入
- パスワードからフィッシング耐性のあるハードウェアキーへ段階的に移行
『グローバル認証状況調査 2025』について
- 調査対象国:米国、英国、オーストラリア、インド、日本、シンガポール、フランス、ドイツ、スウェーデン
- 対象人数:各国2000名(就労者)/計1万8000人
- 調査実施期間:2025年8月15日〜27日
- 実施方法:Talker Research社によるダブルオプトイン方式のオンライン調査
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