コープさっぽろ/日清食品GのIT費用管理術 AI台頭で状況が一変している今、CIOが担うべき役割とは
「CIOはIT活用のアクセルを踏む存在に」長谷川氏と成田氏がIT投資の現在地を語り合う
「100%プラスはありえない」サービス移行にともなう現場への反発にどう対応すべき?
畠山:IT費用は効果が見えづらい分、削減の圧力が働きやすい傾向があります。経営陣や他部門に必要性を理解してもらうには、単なるIT部門の支出ではなく、経営課題への投資として捉えてもらうことも大切だと思いますが、お二人はどんな取り組みをされてきたのでしょうか。
長谷川:そもそも私は「ITと経営課題は別」と見られている前提自体がありえないと思っています。むしろ、経営陣やユーザー部門に頼まれてIT施策を実行しているわけですからね。もちろん費用の細かな内訳までは理解されていないでしょうが、「供給高の1.3%」の基準を守っているので「無駄遣いしている」とは見られていないはずです。
成田:当社の経営陣も、IT投資の重要性はしっかり理解していて、ここ数年でさらに感度が上がっているように思います。コロナ禍で業務時間中にネットワーク遅延が起きたり、サイバー脅威の増大を目の当たりにしたりして、「IT投資を怠ると経営上のリスクにつながりうる」と肌で感じているからだと思います。
畠山:IT費用への理解があっても投資できる額は無限ではないため、優先順位づけやアロケーションも重要だと思います。お二人はどんな基準で「ここは費用をかけるべきだ」と判断されていますか。
長谷川:私はコストカットと並行して投資を進めているので、「IT費用が限られている」という感覚がそもそもないですね。10万円以上の支出はシステム審査会で私がレビューし、よりコストパフォーマンスの良い代替案がないか確認しているんです。そのうえで、課題管理表に沿って売上利益へのインパクトが大きい順に発注しています。
成田:私は事業継続に関わる費用を優先します。攻めの投資もしたいですが、経営目線で見るとまずは“守り”がIT部門の責務としてはるかに重要だと思うので。新規投資をする際は、技術的に陳腐化して重要度が下がった支出などを縮小・廃止して原資を作るといったことに配慮します。
畠山:サービスや製品をリプレイスする際の判断基準はいかがですか。
長谷川:PCやFAXのように同じ品質を価格で比べられるものは相見積もりを取ります。実は今、社内で使っているチャットツールを「Slack」から「Google Chat」に移行することを検討しています。業務の土台が「Google Workspace」なので連携もしやすくなりますし、今は「Gemini」との統合も進んでいますしね。
成田:以前はSlack推しだった長谷川さんからそんな発言が出るとは! ただ、当社が活用している「Microsoft Teams」もAI連携で進化していることを踏まえると、Google Chatへの移行は時流に合っていると思います。
当社ではリプレイスも使いやすさ重視で、比較表よりユーザーの実感で決めます。社内版ChatGPTの開発に携わるエンジニアにも「世の中に、より良いものが出たらいつでも捨てる覚悟で進めよう」と伝えていますね。とはいえリプレイスの判断が難しく、用途がかぶるサービスもあって、たとえばローコード開発においてWebサービスを作る際は「kintone」、アプリケーションを作る際は「Power Apps」を活用するといった形で明確に線引きをして使い分けているのが実情です。
畠山:こうした投資方針が、事業部門のニーズと衝突することはないのでしょうか。
長谷川:それはたしかにあって、Google Chatへの移行も現場から反対意見が出ています。ただサービスのリプレイスは、100%を引き継いでプラスアルファを上乗せするというわけにはいかない。マイナスの部分もあればプラスの部分もあって、トータルで良くなるなら移行するという判断です。慣れの問題が大きいと思うので、腹を据えて進めていくつもりです。
また、現在「オールコープ」というテーマで全社横断化施策を進めていて、IT基盤もそろえようとしているんですが、各部門からは「自分たちだけで先に入れたいのに」という声も出ています。そこは全社方針として説明し、理解を促すしかないですね。
成田:当社は基本的に「各部門でやりたいIT施策があれば自律性を持って進めるべき」というスタンスですが、方向性がバラバラになると歪みが出るので、できるだけ全社共通のプラットフォームを適用しようとしています。データ活用一つを取っても、昔は営業部門が独自BIツールを導入したり、マーケ部門が別のデータ基盤を作ったりしていたので、数年前からは「全社共通で採用した最先端のデータ分析基盤を活用してほしい」とお願いしていますね。
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DIGGLE株式会社(ディグルカブシキガイシャ)
「Dig the Potentialテクノロジーで、企業の成長可能性を掘り起こす。」をMissionに、経営資源の戦略的な投資判断を支える「DIGGLE予実管理」をはじめとした、「ヒト」「モノ」「カネ」の最適なリソースアロケーションを実現する複数プロダクトの開発・提供を行っています。「経営の動脈に...
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