生成AIの急速な普及は「AIの民主化」をもたらした一方、生成物における著作権侵害やコンテンツの価値毀損といった課題も浮き彫りになってきた。クリエイターの権利、コンテンツの真正性を担保し、健全な「AIコンテンツ」を享受するための道筋はあるのか。
AIによるコンテンツが溢れる世界 再認識すべき「価値」とは
生成AIが及ぼす影響はとどまるところを知らない。2025年10月にOpenAIが動画生成モデル「Sora 2」、同モデルで生成された“ショート動画”をメインとしたSNS「Sora」を公開すると話題を呼んだ。これまで専門知識や技術がなければ作り出せなかったクオリティの動画を誰もが自然言語で指示するだけであっという間に、そして大量に生み出せるようになった。一方、その動画には有名キャラクターや人物、背景が用いられるなど、AI浸透の裏側では著作権や肖像権などを巡る議論がかつてないほど激化している。特にSNSを中心として、特定の作家や制作スタジオの作風を精巧に模倣したコンテンツが氾濫する現状は、単なる技術の進歩を超え、創作物そのものの価値を揺るがす事態といっても過言ではないだろう。
まさに未曾有ともいえるAIコンテンツの氾濫に、われわれはいかに対峙すべきか。1984年から40年にわたり日本最大級の画像ライブラリ「amanaimages」を運営しているアマナイメージズの望月逸平氏は、「真正性」の再定義が必要だと説く。
現在、生成AIによって出力されるコンテンツの多くは、既存の表現を“享受”することを目的としている。いわゆる「ジブリ風」画像などを例に挙げ、望月氏は「出力段階で特定の制作スタジオの表現をかなり享受したような使われ方がSNSを中心として見受けられる。こうした動きが継続されると、制作スタジオや作品の価値が毀損されてしまうおそれがある」と警鐘を鳴らす。
このような環境下で考えるべきは、情報の「真正性(正しさ)」を担保する仕組みだ。教育現場や広告といった“情報の正確さ”が前提となる場面においては、真正性を担保することの重要性はわかりやすい。たとえば、理科の教科書に掲載される昆虫の写真において、学名に基づいた正確な写真や記録が必要な場合、AIが生成した「それらしい画像」は代替物になり得ない。
多くの画像素材を提供するプラットフォームでは、生成AIによるコンテンツだと明記した上で掲載している中、実際に望月氏の所属するアマナイメージズでは、自社プラットフォームに生成AI画像を混入させない方針を貫いている。それは「現実世界をそのまま切り取った真正性のあるデータ」を求めるクライアントへの責任からだ。「クライアントは『正しさ』を求めている。生成AI特有の不自然な表現をチェックする負担をかけず、『これは本物の写真である』と保証して提供することがより価値となってきた」と望月氏。プロの目利きによる審査を通じ、コンテンツとメタ情報の正しさを保証すること、その重要性が高まってきているという。では、広範にクリエイターの権利を保護するためには何ができるのだろうか。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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