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2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

EnterpriseZine Press

“くら寿司流DX”の立役者・中林章氏が「鳥貴族」擁する新天地で挑む、デジタル×ホスピタリティの実現

「エターナルホスピタリティグループ DX戦略説明会」レポート

 2026年3月19日、「鳥貴族」などを運営するエターナルホスピタリティグループ(以下、EHG)がDX戦略説明会を開催した。国内での事業基盤を強固とする同社は、世界展開を目指し、2024年5月1日に社名を「鳥貴族ホールディングス」から刷新し、“第二の創業期”と位置付けている。そんな同社のDX推進の旗振り役を担うのが、2025年7月に入社した執行役員CDIO(Chief Digital Information Officer)の中林章氏だ。中林氏は前職のくら寿司で、AIによる回転レーンの監視システムやデータ分析などを推進し、デジタル技術で店舗運営を高度化した立役者として知られる。中林氏は、「売上1%の投資で売上10%アップ」という具体的なROI目標を掲げ、AIを徹底活用したホスピタリティの実現を宣言した。

外食産業が直面する「効率化の罠」と人手不足の壁

 現在、外食産業は未曾有の構造的変化の渦中にある。インフレによる原材料費の高騰、深刻な労働力不足、そして人口減少にともなう国内市場の縮小……。これらの課題に対し、多くの企業がモバイルオーダーやセルフレジの導入による省人化を急いできた。しかし、EHGのDXを率いる中林氏は、この風潮に一石を投じる。

 「昨今のセルフ店舗は、企業の立場での効率化に重きを置くあまり、本来の外食の醍醐味である『おもてなし』や、お客様が明るく楽しむ体験を二の次にしていないでしょうか」(中林氏)

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株式会社エターナルホスピタリティグループ 執行役員CDIO 中林章氏

 従来、中年男性の憩いの場というイメージが強かった焼鳥屋を、女性や若年層も来店しやすいように変えて、市場を席捲してきた同社。だが、メイン顧客層である若年層や現役世代は、2030年に向けて減少傾向にある。従来の「安くて美味しい」という価値だけでは、持続的な成長は望めないという。人とデジタルの力で、いかに外食体験そのものを変革できるかが、同社が定義したDXの真の目的である。

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 EHGは、DXを単なる技術導入ではなく、顧客の再定義からスタートさせている。同社が公開したデータによると、利用シーンによって注文傾向が明確に分かれているという。

  • 一人食事客:「もも貴族焼(たれ)」や「かわたれ」など、たれの串焼きを好む傾向がある 
  • 会社員グループ:「山芋の鉄板焼」や「キャベツ盛」など、複数人でシェアしやすいメニューが上位を占める
  • あまりアルコールを飲まない層:「つくねチーズ焼」や「カマンベールチーズコロッケ」など、まろやかで食べ応えのあるメニューとの相性が良い
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 また、X(旧Twitter)のフォロワー分析では、自社ブランドのファンが他にコンビニ系やエンタメ系のアカウントをフォローしている傾向が判明。これは、日常的な消費行動やエンターテインメントへの関心が、外食の来店動機と密接に関わっていることを示唆している。これまで一律に提供されていたサービスを、こうしたデータに基づき、「そのとき、その人に」最適な形で提供することを目指す。この日常の居場所として差別化し、顧客価値を最大化していくことこそが、同社のDX戦略の根幹となっていると説明した。

全社DX戦略の核心:AI成熟戦略と統合プラットフォーム

 DX戦略の核心となるのが、AIを徹底活用して「顧客価値」「企業価値」「社員生産性」の三位一体で最大化を図る点にある。同社は2025年7月から3年間の中期経営計画では、AIを中核に据えてデータと業務を統合する基盤整備を優先し、全社DXプロジェクトのキックオフおよびデジタルプラットフォーム構築を進めるという。

 中林氏は、外食業界全体の現状を「システム主導による効率化の追求が、皮肉にも本来のホスピタリティを希薄にさせている」と分析する。多くの店舗で導入されているセルフオーダーや自動精算は、企業側の論理による効率化であり、顧客にとっては「セルフサービス」という負担増につながっている側面があると指摘。そこで中林氏が掲げるのは「おもてなしの復活」だ。

 「我々は、デジタルに任せられる部分は徹底的にデジタルに任せたいと考えています。しかし、それは人を減らすためではありません。人とデジタルが融合することで、他社にはできない『最高のホスピタリティ』を実現するためです」(中林氏)

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 このハイブリッドモデルにおいて、デジタルの役割は顧客の利便性を高めることだけではない。店員が、顧客の表情の変化に気づき、最適なタイミングで声をかけ、期待を超える満足を提供するための時間と情報を創出することにあるという。具体的には、注文や在庫管理、HACCP(衛生管理)チェックといったルーティンワークをAIやデジタル基盤が肩代わりする。そうすることで、店員は顧客のお見送りや、再来店を促す心のこもったコミュニケーションに集中できる。

 「AIがどれほど進化しても、最後に『また来てくださいね』という一言を添え、お客様に笑顔で帰っていただくのは人の仕事です。デジタルを駆使して徹底的に効率を上げ、その分、人間は人間にしかできない『温かみのある接客』という付加価値に全てのエネルギーを注ぎ込む。これが我々の目指す外食の未来です」(中林氏)

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 同社のAI成熟戦略によれば、AIの活用は提供先ごとに3段階のステップで自律化を進めていく。たとえば顧客体験の領域では、過去の注文実績から提案する「ルールベース」から始まり、類似商品から提案する「データ分析」、そして最終的には会話型の注文支援を行う「AIエージェントの最適化」へと進化させる計画だ。

 「AIが注文履歴や嗜好を分析し、『あなたにはこれがおすすめ』と提案する。店員はその情報を武器に、より温かみのある対人接客に集中する。これが我々の目指す『人とデジタルでおもてなし』の姿です」(中林氏)

 マネジメントの高度化においても同様に、過去実績を追う「リアクティブ(報告型)」から、売上や需要を予測する「プロアクティブ(予測型)」を経て、最終的にはAIが発注・人員・価格の意思決定を自律的に支援する「AI自律型経営」へと到達させることを目指している。中林氏は「人依存から脱却し、AIを活用することで高収益・高付加価値経営へ転換していく」と語った。

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目指すは「全業務リアル連携」 まずは年間2,000時間を削減へ

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この記事の著者

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

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https://enterprisezine.jp/article/detail/24043 2026/03/31 09:00

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