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生成AI時代のデータガバナンス再設計

「データを整えるだけ」の常識は通用しない BI時代から脱却する、AI時代のデータガバナンス

【第1回】生成AI時代、データガバナンスはどう再設計されるべきか

攻めと守りを両立する、データガバナンスの再設計

 では、企業はどのような考え方で、生成AI時代のデータガバナンスを再設計すべきなのか。重要なのは、生成AIを「使うか、使わせないか」という二択で捉えないことである。求められるのは、価値が出る領域では活用を広げつつ、リスクが高い領域では適切に統制することだ。そのための設計原則は、次の3つに整理できる。

1. まず「何に使うか」を明確にする

 目的が曖昧なまま生成AIを導入すると現場は使いどころがわからず、管理側もどこまで許容すべきか判断できない。そのため、「どの業務で」「何を改善し」「どのような効果を狙うのか」を先に定める必要がある。これは“攻め”の観点では活用を広げる出発点となり、“守り”の観点では目的外利用を防ぐ土台となる。

2. 「使ってよいデータ」と「使い方のルール」を整える

 AIに使わせるデータや情報を整え、使い方のルールを明確にしなければならない。生成AIでは、「何を参照させるか」「何を入力させるか」が品質とリスクを大きく左右する。

 どの情報を入力してよいのか、どの文書を参照対象とするのか、高リスク用途ではどこまで人の確認を求めるのかを定めておく必要がある。これは“攻め”の観点では安心して使える環境づくりにつながり、“守り”の観点では誤回答や情報漏えいの防止につながる。

3. 「人の責任」と「見直しの仕組み」を組み込む

 AIに任せる範囲と人が責任を持つ範囲を明確にし、運用結果を見直せるようにすることが大切である。生成AIは要約やたたき台の作成には有効だが、最終判断まで任せるべきではない。

 そのため、どこから先を人が確認・判断するのかを決め、活用結果を振り返れる状態にしておくことが重要である。これは“攻め”の観点では成功パターンの横展開につながり、“守り”の観点では問題発生時の原因分析と再発防止を可能にする。

 生成AI時代においても、「人が考え続ける仕組み」を組み込むことが不可欠である。これは単なるリスク対策ではない。人とAIが協働する中で、組織の意思決定能力そのものを維持し、強化していくための設計が求められる。

おわりに

 生成AI時代のデータガバナンスは、従来の“守り”を否定するものではない。しかし、それだけでは不十分である。求められるのは、価値創出を止めずに安心して使いつづけられる状態をつくるための再設計だ。不変の原則を土台としながら、生成AI特有の失敗や利用実態にあわせて、統制の対象と運用の仕組みを見直していく必要がある。

 次回は、こうした再設計を現場で守られる形に落とし込むために、利用者ガイドラインと禁止事項の設計を取り上げる。規程を「つくること」ではなく、「現場で判断できる形にすること」に焦点を当て、利用シーン別のルール設計を具体的に整理していく。

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この記事の著者

小林 靖典(コバヤシ ヤスノリ)

ショーリ・ストラテジー&コンサルティング株式会社 ディレクター国内大手コンサルティングファームにて、データマネジメント・コンサルティングチームの立ち上げを主導。現在はショーリ・ストラテジー&コンサルティングにてデータ領域の専門チームを率い、データドリブン推進、AI導入支援、データマネジメント/データガバナンス領域のサービスを提供。データ領域のコンサルタントとして十数年以上にわたり、製造業(自動車、電機、機械、化学、食品)を中心に、小売業、通信サービス、金融・保険業、製薬...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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