「人×自律型AI」の協働を夢見ているのに、AIのガードレールを「守りの対策」だと勘違いしている人たちへ
SAS Innovate 2026 in Dallas 現地レポート Vol.1
あくまでも実世界の「文化」の中で生きるのが人間である
今回、目玉の新製品として詳細が明かされたのが「SAS AI Navigator」だ。同社でAI倫理やガバナンスの責任者を務める、レジー・タウンゼンド氏から発表があった。2026年第3四半期より、Microsoft Azure Marketplaceにて提供される予定だという。
これは、既存のSAS製品やプラットフォーム上で動く機能ではなく、独立したSaaSソリューションである。組織内のAIシステム、AIモデル、AIエージェントと、それらに関連する設定やポリシーを把握し、すべてのAI資産をインベントリ形式で可視化・管理できるというものだ。
たとえば、あるオープンソースLLMを組織内で利用しているとしよう。ある日、そのAIモデル内のデータが汚染(ポイズニング)されていることが判明した。しかし、具体的には何が起こっているのか、原因は何か、どうすれば治るのかがわからない……。
そんなとき、AI Navigatorが役に立つ。たとえば今回の場合、同ソフトウェアを開いてみると、このLLMが「RFP(提案依頼書)/RFI(情報提供依頼)ドラフト支援システム」と「社内会議要約ツール」という、2つのユースケースにリンクしていることが確認できた。
2つのうち、社内会議の要約ツールは、あくまでも従業員一人ひとりがその都度利用するものだ。今回はデータ汚染の原因を調査しているため、ドラフト支援システムが怪しい。同システムの構造をAI Navigator内で見てみると、EU AI法(AI act)やサードパーティベンダー・ポリシーのような、どういったポリシーが適用されているかが確認できる。
そして、AI Navigator内には「Assessment(評価)」というタブがあり、そこを開けば、各システムやツールに適用されているすべてのユースケースと、そのユースケースに紐づいているコンテキストをチェックできる。加えて、「Asset Relationship(アセットの関係性)」のタブを開けば、各AIエージェントやAIモデルが有するすべての接続関係性、リンクされているユースケース、エコシステムを表示できる。
こうした情報をもとに、各システムの管理者に連絡し、インシデント対応を依頼できるというわけだ。また、インシデント対応者は具体的なインシデントと修復すべき箇所を特定し、修復案を導き出すことができる。ここまでがAI Navigatorの概要だ。
タウンゼンド氏は、「Governance for the Culture(文化のためにガバナンスがある)」というメッセージを送った。人間は、あくまでもテクノロジーやシステムの中ではなく、「文化」という物語の中に住んでいる。このリアルな文化こそが、人間が最終的に改善や探究を求めるべき場所であり、テクノロジーはそのための手段であるという点を見失ってはいけない。だが、テクノロジーが文化をより良くするための「良い判断」を支えてくれることは間違いない。これこそが、今日よく言われている「人間中心(Human-Centric)」の根本的な意図である。
EnterpriseZineでは近日中に、今回のイベント内で行われた他のセッションやインタビューの内容を掲載する予定だ。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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