クライアント端末の在り方を変革する「クライアント仮想化」
クライアントPCをめぐる状況が、大きく変わりつつある。2009年10月、マイクロソフトから新たなクライアントOS「Windows 7」がリリース。これまで投資マインドの低下などの理由からWindows Vistaへの移行を見送ってWindows XPを長い間使い続けてきた企業も、いよいよOSのサポート切れやPCハードウェアのリプレースを視野に入れた対応を迫られつつある。
Windows XPからWindows 7へクライアント環境を移行するためには、幾つかのハードルが待ち受けている。Windows XPがプレインストールされていた世代のPCはスペック的にWindows 7を稼働させるのは難しいため、基本的にハードウェアは置き換えることになる。また、既存の周辺機器についてもデバイスドライバを更新しなければならないだろう。
さらに、Windows XP上で利用していたアプリケーションがWindows 7上で正常に動作するか、一つひとつ地道に検証していかなければならない。従業員がそれぞれ異なるハードウェアの上でさまざまなOSやアプリケーションを利用しているような環境では膨大な作業になることが想像に難くない。
OSの移行に伴う負担が大きくなる理由はこういうことだ。クライアントPCを構成するハードウェア、OS、アプリケーション、プロファイル情報といった各要素がレジストリ情報とともに複雑に絡み合っているため、どれか1つに変更を加えるだけでほかの要素すべてに影響が及んでしまう。ハードウェアを変更すればOSとアプリケーションが影響を受け、OSを入れ替えればハードウェアやアプリケーションが影響を受け……といった具合だ。
こうした課題を解決する技術として、昨今大きな期待を集めているのが「クライアント仮想化」。これはハードウェア、OS、アプリケーション、プロファイル情報を分離した上で、仮想化技術を使ってサーバやブレードPCなどに集約して一括管理するものである。
クライアントOSはすべてサーバの仮想化環境上で動作し、ユーザーはシンクライアントやPC、ネットブックなどのクライアント端末を通じてリモート操作する。アプリケーションもサーバ上で一括管理し、必要に応じてクライアントに配信することで実行環境を提供するわけだ。こうした方法であれば、先述したようなクライアントOSのアップグレードに起因する多くの問題を解決できる。
しかし、クライアント仮想化が注目されている理由はそれだけではない。スマートフォンやネットブックといったさまざまなモバイル端末が普及した現在、業務用クライアント端末の種類は多様化しつつある。それに伴いPCとWindows OSの組み合わせだけではなく、さまざまな種類のクライアントプラットフォーム上で同一のデスクトップ環境を利用したいと考える人が増えてきている。そして、その実現にはデスクトップ環境をサーバやブレードPC上で一括管理するクライアント仮想化の手法が極めてフィットするのである。(次ページへ続く)