クライアント仮想化をめぐる直近1年間の変化
ちょうど1年前、シトリックスさんとマイクロソフトさんを交えてクライアント仮想化をテーマに座談会を行いました。その後、クライアント仮想化を取り巻く環境にはどのような変化があったのでしょうか?
ユーザー企業のクライアント仮想化に対する認知度は、確実に高まってきました。以前はどちらかというと、個人情報保護法の施行に伴うセキュリティ強化や、パンデミック対策などのために、やむなく導入を検討する企業が多かったのですが、最近は前向きな動機での導入が増えてきました。例えば、スマートフォンやタブレット端末から利用できる業務アプリケーションを効率よく開発するために、クライアント仮想化の技術を取り入れる企業なども増えてきましたね。
従来、クライアント仮想化のメリットの一つとして、在宅勤務やモバイルワークの推進、いわゆる「ワークスタイルの革新」という側面が訴えられてきましたが、リーマンショックで一度立ち消えになってしまったという経緯がありますよね。最近は、多くの企業の経営状態がようやく回復基調に乗ったこともあって、震災前までは「ワークスタイル革新」「ワークライフ・バランス」というキーワードで再び注目を集めるようになっていました。
技術的にもだいぶこなれてきたという印象ですね。サーバ仮想化が普及して、仮想化技術のコストメリットが広く認知されたことが追い風になっている気がします。サーバ仮想化の場合とまったく同じく、手始めにクライアント仮想化を試験導入した企業の多くがそのメリットをすぐに認めて、そのまま本格導入に乗り出すケースが多いようですね。またストレージ装置が安価になってきたことも、コスト面でのハードルを下げる一因になったと思います。
より手軽にクライアント仮想化ソリューションをお客さまに導入していただけるよう、日立でもこの1年間でソリューションを拡充しています。その1つが、エントリーブレードサーバ「HA8000-bdシリーズ」を使ったSBC(Server Based Computing)方式のソリューションです。「FLORA bd500シリーズ」を使ったブレードPC方式はユーザー個別の環境を構築するのに適したソリューションとして納入実績を伸ばしてきていますが、業務やデスクトップ環境が標準化されている場合は、ブレードPCよりSBC方式の方がコスト的には有利なことが多いのです。そこで、ブレードサーバーにサーバOSとCitrix XenAppをセットアップしてお客さまに提供するソリューションを始めました。
日立では、クライアント仮想化の導入を検討されているお客さまに対して、業務内容・用途・コストなどさまざまな観点からのご提案をさせていただき、お客様価値創造に最善となる方式のソリューションをご提供させていただいています。そのソリューションのひとつが、ブレードPC方式であり、また、ターミナルサーバ方式などのSBC方式なのです。もちろん、複数の方式が混在することも可能です(図1)。
ちなみに、こういったソリューションの導入先としては、やはり金融系の企業が多いのでしょうか?
金融系企業は、個人情報の漏えい防止という観点で、比較的早くからシンクライアントを導入していましたね。ただし、ここに来て他業種の企業が、クライアント仮想化のコストメリットに着目して導入に乗り出すケースが増えてきています。例えば、遠隔地の拠点を多く設けている物流系の企業が、クライアント環境の管理コスト削減を狙って導入するケースもありますね。
アイ・ティ・アール(以下、ITR)では、製造業からの問い合わせも増えています。特にここ数年、海外拠点からの開発・設計情報の漏えいを防ぐ手段として、クライアント仮想化、現在は特にデスクトップ仮想化に注目している企業が多いですね。
官公庁や教育機関、医療機関からのニーズも多いです。それから、業種を問わずあらゆる企業で課題になっているのが、Windows XPのサポート切れ問題です。2014年4月でWindows XPのサポートが終了してしまいますから、それを機にクライアント仮想化環境への移行を検討している企業は非常に多いですね。