「従業員向け」と「IT部門向け」のAIエージェントで実行
セールスフォースがIT Serviceで提供する機能は、「従業員向けAIエージェント」「ITサービスデスク」「CMDB&ディスカバリー」「IT部門向けAIエージェント」「ITコンプライアンス」「ハードウェアアセット管理」の6つ。このうち2つのAIエージェントが会話ベースでフローを実行するもの、残る4つはITIL(Information Technology Infrastructure Library)に準拠した運用のための機能群である。
図2:Salesforce IT Serviceの6つの主要機能(出典:セールスフォース・ジャパン)
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主要ITSMツールは、どれも「インシデント管理」「問題管理」「変更管理」「SLA管理」などの機能を実装しており、いずれもITILのプラクティスに準拠している。ITILは、障害対応の標準化によるサービス停止時間の短縮、変更管理によるリスクの低減、エンドユーザーやベンダーとの円満な関係構築に役立つフレームワークだが、この中のすべてのプラクティスを取り入れる必要はない。
また、2026年2月に発表されたバージョン5では、AIを前提としたものへと大改訂があり、プロセス効率化から組織横断的な最適化のためのものへと、フレームワークの位置づけが変わってきた。とはいえ、ほとんどの企業が認識している標準フレームワークは、まだバージョン4であろう。バージョン5でも、AIエージェントをITサービス提供にどう組み込むか、その具体的なイメージを示しているわけではない。
ITIL準拠は当然として、三宮氏は「Agentforceで先行したセールスフォースは、IT Serviceで他社とは違うユニークなアプローチを採用している」と述べ、会話中心であることが、従業員に負担を強いることなく、迅速な解決を可能にしていることを強調する。
また、IT Serviceは、ITSMツール市場においては、“後発製品”と受け止められているが、これまでのService Cloudの実績があっての製品であり、セールスフォースとしては、まったく新規で提供するわけではないため、後発と考えていないという。その主張は、製品アーキテクチャを見るとよくわかる。IT Serviceは、Salesforce Platform、Data 360、Service Cloud(旧称:Agentforce Service)の上にITサービス特有の機能パッケージを載せ、2種類のAIエージェントを組み込んだものになっている。
図3:Salesforce IT Serviceの製品アーキテクチャ(出典:セールスフォース・ジャパン)
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Service Cloud利用企業の領域拡大を狙う
「市場の受け止め方はさておき、ITサービスはあくまでもService Cloudのユースケースの1つに過ぎない」と語る三宮氏は、あえて競合他社との差別化要因を挙げるとすれば2つあると述べた。その1つは、製品の設計思想がAIネイティブであること。Agentforceをベースに従業員体験を再設計して提供しており、プロセス効率化に焦点を当ててきた既存製品に、AIエージェントを組み込む発想ではないという主張だ。もう1つは、製品アーキテクチャの構成要素すべてを、ベストプラクティスの組み合わせで提供していること。カスタマーサービス市場におけるリーダーだからできるという自負が滲む。
ITSMというユースケースの性質上、ターゲット顧客としては、業種・規模を問わないが、Service Cloudを利用中の企業を想定している。既存顧客へのクロスセルオファリングを想定しており、社内で容易に利用を拡張できる点が支持されると考えている様子だ。三宮氏は「国内外でITSM製品の選択肢は多いが、多くの企業で機能を使い込んでいないと感じる。各社が充実した機能を提供しても利用が追いつかず、簡単なインシデントマネジメントはできても、その先のITオペレーションマネジメントやアセットマネジメントに進めていない。足踏み状態の企業からの悩みをよく聞く」と話す。取り組みを拡張したくても、導入済みの製品の機能を十分に使いこなせていない状況は、特に日本企業は顕著だという。
その状態で、AIエージェントを導入しようとしても定着するかは疑問だ。セールスフォースの場合、Service Cloudを利用していれば、体験そのものを変えるところからスモールスタートで導入できる。三宮氏は「ITSM製品では他ベンダーの製品を扱うパートナーもいるが、IT Serviceは健全な競争を促し、市場全体を活性化することにつながる」と訴えた。ITSMに限らず、セールスフォースが訴え続けているのは「What if?」である。つまり「もしITサービスにおける従業員体験が変わるとどうなるか」という問いが、会話中心の設計思想の出発点になっている。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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