ID(アイデンティティ)管理大手のOktaが、パートナー施策を大きく切り替える。販売パートナーだけを対象にしてきた従来のプログラムを改め、2027年に新プログラム「Okta Partner Accelerator」を始める。導入を担うサービスパートナーや、他社製品と連携するテクノロジーパートナーも対象に加え、従来のID管理に、AIエージェントのセキュリティという新しい市場を重ねていく。
来日した米OktaのSVP(上級副社長)ローラ・パディラ氏と、Okta Japanの竹内宏之氏(執行役員)は10月8日、取材に応じた。パディラ氏は「今は、Oktaのパートナーになっていただくのに、最高のタイミングだと思います」と話す。
パートナー経由の事業は急速に伸びている。FY27(2027年度)上期で、パートナーが創出した案件のARR(年間経常収益)は前年比で約250%増え、50万ドルを超える大型案件では約300%増だった。受注額に占めるパートナー経由の比率は約80%に達し、AWSのクラウドマーケットプレイス経由の契約総額も20億ドルを超えた。前四半期は受注額の大きい上位20案件のすべてにパートナーが関わっている。
この成果を土台に、Oktaは投資先をグローバルで約2,300社あるパートナーから100社強の「フォーカスパートナー」に絞る。世界規模で企業のシステム構築を請け負う大手SIerのうち、Deloitte、NTTデータ、PwC、Accentureの4社とは、業界別の専門チームづくりを進める。製品面では、顧客向けID管理サービス「Auth0」、ID管理とガバナンスを担う製品群(IGA)、AIの3分野に専用の販売手法を用意した。導入作業は、Okta社内のプロフェッショナルサービスからパートナーへ移していく。
社内の体制も変えた。パートナーが自分で見積もりを出せるポータルを整え、AWSマーケットプレイスのプライベートオファー(特定の顧客だけに個別の条件を示す販売方法)も自動化している。営業担当には、できるだけ早く商談にパートナーを加えるよう求め、商談が受注に近い段階に進んだ時点でパートナーを選ぶことも必須にした。
プログラムの作り直しも、この流れの中心にある。現行の「Okta Elevate Partner Program」は4つのレベルを持つが、対象は販売だけだった。導入や実装を担う企業を結果として外していたと、パディラ氏は振り返る。
新プログラムは、セールス、サービス、テクノロジーの3トラックで構成し、パートナーは1つでも複数でも選べる。各トラックのレベルは3段階だ。セールスでは売上目標や新規顧客の獲得を、サービスでは導入実績や顧客満足度、技術力などを評価する。テクノロジーは、他のソフトウェア企業がOktaと製品を統合し、顧客に届けるためのトラックにあたる。特典には、紹介への報酬、新規顧客を獲得したパートナーへの報奨、期間内に製品を導入したパートナーに払う「デプロイメントアクセラレーター」が加わる。
市場も変わってきた。竹内氏は「3年前は、アイデンティティのアクセスマネジメントがビジネスの発射台でした」と話す。大手企業にはすでに何らかの製品が入り、いまは誰がどの権限を持つかを管理するガバナンスと、管理者権限を守る特権アクセス管理が最も伸びているという。OktaとAuth0の比率も、3年前の約8対2から、6対4か7対3ほどになった。背景には、日本の金融機関を狙った不正アクセスがある。証券会社で被害が相次ぎ、多くはサービスアカウントから侵入されたと竹内氏は語る。
そこにAIエージェントの安全管理という需要が加わり市場が広がった。Oktaは2026年9月、AWS、Google Cloud、CrowdStrikeなど12社と、業界横断の枠組み「Blueprint Alliance」を発足させた。チャネルパートナーが手がけるAI関連サービスの市場は、調査会社Canalysの推計で約3,150億ドルあり、サービストラックを新設した理由を、市場規模を表すTAM(獲得できる最大の市場規模)という言葉で「サービスに特化したTAMが存在するからです」と説明した。AIプラットフォームではAnthropic、OpenAI、Googleと連携しており、DeloitteやAccenture、NTTはAIセキュリティの専門部門を立ち上げ、数千人規模の社員を育成中だという。
竹内氏は、Oktaだけですべての顧客のAIエージェントを守るのは難しいと言う。DeloitteやPwCのようなコンサルティングファームは独自の枠組みを持つが、「さまざまなコンサルティングファームにも入っていただきたい」と話す。日本のSIerには「AIエージェントに対して何をすれば十分なのか、皆さんアイデアがなくて困っている」状況があり、Blueprint Allianceの設計図(ブループリント)に自社の商材を当てはめて、独自の設計図を作ってほしいという。
日本では従来、国内のSIerが中心だったが、いまはGSI(Global System Integrator)との連携が急速に始まっている。GSIは経営層に直接提案するケースが多く、セキュリティ経営やAIの導入をトップダウンで進められると竹内氏は見る。議論の対象は金融、製造、小売の3業種で、小売はAuth0と相性がよいという。
サービス専業のパートナーは日本に5〜6社あるが、体系的なプログラムがなく、特典を十分に出せなかった。新プログラムで、その状況が変わる。テクノロジーのトラックには、AWS、Zscaler、CrowdStrike、パロアルトネットワークスなどが入り、竹内氏はトレンドマイクロのように日本に拠点を置く企業も増やしたいと話す。
導入支援での競合にも手を打つ。海外ではOktaのプロフェッショナルサービスとパートナーが同じ案件で競う例があり、一定の金額を超える案件はすべてパートナー経由に切り替えた。Okta自身も、案件登録の自動化やポータルへのAIエージェント導入で、パートナーの支援にAIを使う。AIの認定制度やハンズオン形式の技術研修も用意した。AWSなど強みを持つ技術パートナーと組めば、パートナーは「差別化しやすく、案件単価も上げていただける」と竹内氏は話す。新プログラムの詳細は現在詰めている段階で、日本語の資料も今後つくる予定だ。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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