利用者たちに混乱が巻き起こったJCOMの大規模障害──その原因から、忘れがちなBCPの観点を問い直す
突如サービスが使えなくなったユーザーたち……問い合わせの電話もつながらず、状況がつかめない事態に
「システムに問題はない」と「サービスが使える」は違う
今回の事例には、もう一つ重要な論点がある。それは、「システム監視」と「サービス監視」の違いである。
システム監視においては、それぞれのサーバーが起動しているか、CPUやメモリに異常がないか、ネットワーク機器が応答しているか、といった内部の状態を見る。しかし、内部の機器の状態は「正常」だと確認されても、利用者側がサービスにアクセスできるとは限らない。今回、高負荷が発生したDNSは、利用者が目的のサービスへ到達するために必要な入口の一つである。個々のサービスを構成するシステム自体は動作していても、入口が機能しなければ、利用者から見れば「サービスが使えない」状態なのだ。
そこで必要となるのが、利用者と同じ位置からサービスを確認する、サービスの「外形監視」である。これは、実際に外部から接続してみることで、名前解決ができるか、ログインできるか、主要機能が利用できるかを継続的に確認することを意味する。機械が正常かを見る監視から、「顧客がサービスを使えているか」を確認する監視への転換ともいえる。危機管理においては、この視点の違いが初動速度を左右することになる。
最初に障害に気づいたのは誰か?
本件のさらに興味深い点は、JCOMだけでなく、同社のサービスを利用する各地のケーブルテレビ事業者にも影響が広がったことである。
JCOMの公式Xによる障害告知は、10時24分だったと整理されている。一方、飯能日高テレビの障害情報を見ると、10時00分時点ですでに「上位回線側での障害が発生しております」と利用者向けに案内している。その後、11時、12時、13時と情報を更新し、14時にはJCOM側の障害であることを明記している。この事案は、JCOM単体だけでなく複数組織にまたがる障害として問題化されたのだ。
サービス提供の構造が複雑になると、障害を最初に認識する組織と、原因を調査する組織と、顧客へ説明する組織が一致しなくなる。また、それぞれの組織が持っている情報も異なる。この状態で「原因が完全に分かってから発表する」という方針を取れば、情報発信は必然的に遅くなる。必要なのは、原因の確定を待つことではなく、「現在確認できている影響」と「現在調査していること」を切り分けて発信する仕組みである。
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- この記事の著者
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野村 浩司(ノムラ コウジ)
株式会社インシデントテック 代表取締役
株式会社NTTデータ 経営戦略室事業戦略担当 シニアエキスパート
グロービス経営大学院 MBA(経営学修士) 修了金融システムの開発・保守・運用と改善を15年担当し、10年にわたり約2000件の障害事例を分析。システム障害...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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舟津 昌平(フナツ ショウヘイ)
経営学者
東京大学大学院経済学研究科講師
京都大学大学院修了、博士(経済学)京都大学法学部卒業、京都大学大学院経営管理教育部修了、専門職修士(経営学)。2019年、京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。京都産業大学経営学部准教授などを経て、2023年10月より現職。専門分野...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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