利用者たちに混乱が巻き起こったJCOMの大規模障害──その原因から、忘れがちなBCPの観点を問い直す
突如サービスが使えなくなったユーザーたち……問い合わせの電話もつながらず、状況がつかめない事態に
迅速な復旧がすべてではない、BCPで守るべき3つの経路
障害時発生時、事業を復旧するために守るべき対象は、システムそのものにとどまらない。①サービスを動かす経路、②障害の理由を知る経路、③利用者に伝える経路の3つを分けて考える必要がある。
第一に、サービスを動かす経路。サーバーやネットワークを冗長化し、一部に障害が発生してもサービスを継続できるようにすることで、サービスの可用性を担保できる。
第二に、障害の理由を知る経路。内部のサーバーや機器が正常に見えていても、利用者側からみてサービスが使えるとは限らない。そのため、利用者と同じ外部環境から接続し、「サービスとして機能しているか」を確認する仕組みが必要となる。
第三に、利用者に伝える経路。サービスが止まったとしても、何が起こっているのか、どの範囲に影響を及ぼしているのかを知らせる手段まで失ってはならない。公式サイト、SNS、メール、電話など、サービス本体とは独立した情報発信経路を確保しておく必要がある。
つまり、危機時には「動かせること、異常に気づけること、伝えられること」の3点が必要となる。どれか一つが欠けても、利用者視点では危機対応は成立していない。自社サイト、SNS、メール、電話、提携事業者など、いずれか一つが障害に巻き込まれても、別の手段から情報を届けられるようにする。たとえばStatus Pageのように、本体サービスとは異なる基盤から障害情報を発信する仕組みもその一つである。
危機対応というと、どうしても「いかに素早く復旧させるか」に関心が集中する。しかし、利用者から見れば、復旧までの数時間もサービス体験の一部であり、システムを止めないことだけがBCPではない。止まったときにも、組織が状況を把握できること。そして、利用者とのコミュニケーションだけは切らさないこと。デジタル化が進むほど、この「ユーザー目線」の重要性が高まっている。
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野村 浩司(ノムラ コウジ)
株式会社インシデントテック 代表取締役
株式会社NTTデータ 経営戦略室事業戦略担当 シニアエキスパート
グロービス経営大学院 MBA(経営学修士) 修了金融システムの開発・保守・運用と改善を15年担当し、10年にわたり約2000件の障害事例を分析。システム障害...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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舟津 昌平(フナツ ショウヘイ)
経営学者
東京大学大学院経済学研究科講師
京都大学大学院修了、博士(経済学)京都大学法学部卒業、京都大学大学院経営管理教育部修了、専門職修士(経営学)。2019年、京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。京都産業大学経営学部准教授などを経て、2023年10月より現職。専門分野...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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