ロッテ/マクロミルに見るAI-ReadyなITインフラの姿 AIエージェントが変革する基盤移行と運用
Google Cloud「AI-Ready Infra & DB Summit」基調講演レポート
3つのプロジェクトを同時並行で進めるロッテの実践知
続いて1人目のゲストとして登壇したロッテの橋本桂祐氏が、同社におけるAI活用の現状を紹介した。橋本氏が所属するDX推進チームは2025年春に発足し、「事業部門の課題解決を支援するITパートナーとしてDX/AIをアジャイルに推進し、データ/AI駆動型の経営・事業活動の実現に貢献する」というミッションを掲げ、DXを進めている組織だ。「データとAIの基礎作り(ステップ1)」「AI-Ready化(ステップ2)」「AI-Powered化(ステップ3)」と3段階でAI駆動型の組織へと変わるべく、変革に取り組んでいる。橋本氏は「現在はステップ2のフェーズにいる」としたうえで、「反復的な作業や“Excelバケツリレー”と呼ばれる部門間の情報の受け渡しをAIに置き換え、その先の価値創出の実現に進みたい」と語った。
AI活用に関しては、2026年から3つのプロジェクトを同時並行で進めている。その1つが9つの重要ユースケースを対象とする「AI開発プロジェクト」だ。このプロジェクトは、ビジネス成果の創出に向け、社長への定期的な進捗報告が義務付けられているという。
2つ目のプロジェクトが「AI/データ基盤構築プロジェクト」で、ガバナンスを効かせてAIを活用するための基盤構築を目的とする。3つ目は「グループ標準言語定義プロジェクト」で、ビジネスメタデータの整備を目的としたものだ。
DX推進チームがミッションに掲げている「事業部門の課題解決を支援するITパートナー」になるためには、“御用聞き”のスタンスでは不十分だ。事業部門の目指す目標を理解し、同じ目標を共有している仲間だという信頼関係を構築する必要がある。
具体的な対策として、たとえば企画段階ではコミュニケーションの齟齬が起きやすいため、作るべきものが出てきたら、1週間程度でモックを作って事業部門に見せる。こうすることでDX推進チームは、事業部門との認識のズレを早めに是正でき、事業部門との信頼関係を醸成できる。橋本氏は「AIのおかげで、スピード感をもって事業部門と連携しやすくなった」と述べる。
3つのプロジェクトを同時並行で進めるのは、ビジネス価値の創出を早く実現したいと考えているためだという。ロッテが選んだ9つのユースケースは、投資に見合うリターンが期待できると経営層に説明したうえで進めている。また同時に進めることで、要件を基盤設計に反映するスピードも速くなり、事業部門にとって納得感のある設計に磨き込むことが可能になる。今後は、IaaSの移行や運用にAIエージェントを活用することも見据える。
レガシーマイグレーションのハードルを下げるGemini Code Assist
冒頭に挙げたテーマ2つ目の「AIで作る基盤」は、古いシステムの維持に悩む企業に向けて、AIを活用した移行を提案するもの。古いシステムの移行はリスクが大きく、手間がかかる。そこで安原氏が紹介したのが、移行支援プラットフォーム「Migration Center」に追加した機能「Agentic Quick Estimator」だ。
これはVMwareからの移行時に利用することを想定しており、移行時のTCOを自動的に推計してくれる。「ライセンス費用や既存システムの処理能力を考慮して新環境の最適な構成を知りたい」などといった踏み込んだニーズにも応えることが可能だ。
また、ソースコード解析ツールとして安原氏は「Gemini Code Assist」の利用を推奨する。レガシーアプリケーションのコード資産は非常に規模が大きいうえに、当時の開発メンバーが残っておらずノウハウが社内に蓄積されていないことも多い。そこで、コードの解析をGeminiに任せることでソースコードを刷新し、保守と運用の容易性を高められるとした。
加えて、アプリケーションだけでなく、データベースの移行にもコード解析を活用できる。従来、ストアドプロシージャーを多用している複雑なデータベースの移行は非常に難易度の高いものだったが、今はGeminiでSQLコードを解析し、スキーマ構成や変数定義のような特性を理解した上でコード変換ができるようになった。
さらに、運用の工程でもAI活用の余地は大きい。Google Cloudの調査によれば、国内におけるSRE(Site Reliability Engineering)の認知度はさほど高くないようだ。取り組みの一例として、GoogleのSREチームでは手作業の時間を全体の50%以下に抑え、残りを自動化や開発に充てることを推奨する「50%ルール」がある。AIはトイルと呼ばれる反復作業の自動化を促し、SRE実践のハードルを下げることにも役立つ。
GoogleのSREチームでは、「ページングと初期調査」「緩和」「根本原因の分析と長期的な解決策の実施」「ポストモーテム(事後検証)」の4つのステップで、Geminiを活用したインシデント対応を行っているという。ポストモーテムとは、どうすれば再発しないかを突き詰めるステップで、面倒で後回しにされがちな作業だ。これをGeminiに文書化してもらうことで、別のインシデントが発生した時に参照可能な資料にもなる。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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