マイクロストラテジーの、今回のバージョンアップのポイントは、完全にモバイルに照準をあてていることである。
「iPhoneは今や、2003年頃のMacと同等の性能のマシンですが、それを使うビジネスユーザーが世界的規模で拡大しています。従来、人々が紙を利用し記憶していたもの、カバンやポケットに入れていたものは、すべてモバイルのアプリに吸収されると私は考えています。」とバンサル氏は語る。
「モバイルインテリジェンス」こそが主流になると同社は考えているのだという。
BIのダッシュボードをモバイルで参照するiPhone/iPadアプリケーションは昨年から提供していたマイクロストラテジーだが、今回のバージョンアップは、分析機能、トランザクション機能、情報開示機能と広範囲の情報機能を備え、本格的なBIツールと進化した。
とくに今回は、最新バージョンの、MicroStrategy 9.2.1でモバイル・トランザクション機能が加わる。こちらについては6月にリリースされる予定である。他社のBIとの比較において、同社の強みはトランザクション処理のパフォーマンスの優位性であるという。
また、BIプラットフォームでありながらも、コンテンツ配信(情報表示)機能を持っている。同じアプリから企業のコンテンツデータ(カタログ、Webコンテンツ、PDFなど)にアクセスし表示するビュアー機能を持つ。なぜBIプラットフォームがコンテンツ機能を併せ持つのか?「企業のエグゼクティブやマネージャが、ダッシュボードで情報を得ると同時に、カタログや資料も外出先で利用する。企業情報活用のプラットフォームとして統合されていることが必要」と述べる。
今回の9.2のもうひとつの新機能は「Visual Insight」である。これはユーザ部門がIT部門のサポートを得なくても分析が行える機能である。分析項目のドラッグ&ドロップなどで簡単に行え、従来のBIでは得られなかった異常値の発見などが簡単におこなえる。
またエクセルデータのアップロードによる分析も可能。
ユーザーインターフェースはWebブラウザなので、企業は社内のSaaSとして、すべてのユーザーにVisual InsightのBI機能を提供できる。
次にバンサル氏が紹介したのは、マイクロストラテジーのBI技術を応用し、Facebookのコンテンツから企業が求める情報を探索、照合、整理を行う「Wisdom.com」
Facebookの「友達」のネットワークのコメントやデータをマイニングするというもの。これは企業のカスタマーサポートやマーケティング分析に活用される。現在は英語対応のみであるが、こうしたテキストマイニングの技術の応用は将来的には日本でも有効になるだろう。
「モバイルインテリジェンスという先進的な戦略を打ち出したマイクロストラテジーが、近いうちに発表を予定しているのが、クラウドベースのインテリジェンスです。全てのBIプラットフォームをSaaS型で提供する。企業の業務分野からIT部門に頼らず、分析をアウトソーシングできる」(バンサル氏)
モバイルインテリジェンスの次は、クラウドインテリジェンス。マイクロストラテジーの独立性を生かしたBIソリューションの進化は当面続く様子である。