FAXの使用頻度は減少したが現場ではまだまだ必要?
インターネットが一般化し、ビジネスにおいても様々な情報通信機器が活用されるなかで、3年前と比べた使用頻度はどのように変化しているのか。インターネットFAX総合研究所が中小企業の従業員860名に対して行なった調査によると、社外でのPCの使用やスマートフォンなどのモバイル情報端末はあまり浸透していないものの、携帯電話では22.7%、PCの社内利用では40.5%が「使用頻度が増えた」と答えており、ネット時代の情報通信機器の使用が着実に増えていることがうかがえる。
その一方で固定電話では12.6%、FAXでは15.1%が「使用頻度が低下した」と答えており、従来型の情報通信機器の使用頻度が減っていることが示されている。(図1)この傾向は使用頻度の増減率を比較するといっそう明らかになる。「増えた」と答えた割合から「減った」と答えた割合を引くと、FAXも固定電話もマイナスになり、減少傾向にあることがわかる。特にFAXについては-5.9%と縮小傾向が最も大きく、調査対象の中で最も使用が減っている情報通信機器ということになる。(図2)こうした結果から、PCや携帯電話、スマートフォンなどに比べ、FAXの利用頻度が低くなっていると認識していることがうかがえる。
それでは、実際にFAXが使われている現場でも、同様の認識を持っているのだろうか。同研究会が中小企業の従業員860名に対して行なった「FAXの必要性」についての調査によると、44.0%が「FAXは必要不可欠であり、なければ業務ができない」と答え、43.5%が「FAXはあった方がよく、なければ業務で困る」と答えている。両者を合わせた「FAXは必要」とする割合は87.5%にも上り、現場では大多数の従業員がFAXの有用性を強く認識していることがうかがえる。(図3)さらに、FAXを利用する理由については、送信が「相手がそれを求めている」とする人が55.9%と最も多く、受信では「業務として定着している」とする人が最も多い(64.7%)。そこに簡便性などもあいまって、業務の中に定着し、習慣化していることが明らかになった。(図4-1、図4-2)従業員については使用頻度については減っているが、まだまだ必要性は感じているという実態が明らかになった。経営者に対しても、必要性をどうとらえているかの調査が今後必要であろう。
意外に見過ごされている、FAXのコスト削減
FAXについて、なくてはならない重要な存在として捉えている現場に対し、使用されてはいても徐々に衰退傾向にあると評価する経営層。そのためだろうか、FAX使用の経費削減の取り組みに積極的に取り組んでいる経営者は1/3以下にとどまった。通信コストの削減について「実施も検討もしていない」という43.6%と「検討中」とする32.1%を合わせると未着手の割合が75.7%にもなる。紙代やトナー代などの比較的わかりやすい印刷コストについても「実施も検討もしていない」が36.2%、「検討中」が30.4%で、未着手の割合は66.6%になった。一方で使用頻度が減少傾向にあった固定電話に対する経費削減策への取り組みは、IP電話の導入(40.9%)や割引プランの導入(52.6%)など積極的に行なわれていることが伺える。最もアナログな郵便料金についても、37.5%が経費削減を実施中と答えており、FAXはどの情報通信機器に比べても取り組みが遅れている。(図5)
FAXの経費削減策が積極的に行なわれてこなかった理由についての調査では、半数以上の56.8%が「使用量が多くないため、経費削減の必要性を感じていなかった」と答えており、「経費削減できると思っていなかった」「方法がわからなかった」「他に優先順位が高い課題があった」など消極的な答えが続く。(図6)ここでも「FAXは業務に必要」とした現場と、意識が薄い経営層とのFAXに対する認識の乖離を感じずにはいられない。
しかし、必ずしも現場からの改善ニーズが高かったわけではない。前述したように、現場でのFAXの使用理由は「業務として定着している」「相手が求めている」といった習慣性に負うところが大きい。安定した情報通信機器だけに、特に使い勝手に対する不満もなく、改善策を模索することもなく、おそらく経費についてもあまり疑問を持つことがなかったのではないだろうか。そうした状況下にあるFAXについて、特別な期待を持たない経営層が、現場から歓迎されない経費削減や業務改革に積極的に取り組む理由は見つからない。
とはいえ、経営層も決して完全に放置してきたわけではない。FAXの経費削減について「実施はしていないが検討中」と答えた割合は、通信コストと印刷コストの両方とも、他の情報通信機器より10%ずつ多い。(図5)漠然とFAXの経費削減に取り組む必要性を感じながらも、他の情報通信機器や課題を優先させてきたことがうかがえる。裏を返せば、これまでおざなりになっていただけに、FAXの経費削減は取り組めばすぐに十分な効果が得られる可能性を秘めている「盲点」といえるだろう。
インターネットFAXの効果に大多数が期待
それでは、FAXの経費削減に最も効果的なソリューションにはどのようなものがあるのだろうか。最も一般的な施策として認知されているのが、インターネットFAXである。この導入によって得られる効果について、経営者を対象に行なった調査では、76.5%が「印刷しなくてもFAXを送受信できるため紙やトナーの使用を削減できる」と答えており、63.9%が「通信コストを抑えることができる」と答えている。多くの経営者がインターネットFAXによる経費削減効果に期待しているといえるだろう。また、セキュリティや業務効率化の面からも、「印刷の手間が省ける」「文書データを紛失しない」といった項目に半数以上の経営者が「役に立つ」と答えるなど、インターネットFAXへの期待が高いことがうかがえる。(図7)
しかし、導入において経営者側が配慮すべきなのが、現場のFAXに対する親密性だ。前述したように現場の従業員のFAX利用は「業務への密着度」や「利便性」に基づいている。FAXの送受信という行為に大きな変更が生じれば、現場の反発や混乱を招きかねない。当然、取引先や顧客への配慮も欠かせないだろう。こうしたスイッチコストを抑えるためには、現在のFAX機器を活かして現場における操作性を変えることなく、その裏側ではインターネットを活かして通信費を抑えられるソリューションであることが必要だ。
このように現場での利便性を損ねず、顧客や取引先ごとに異なるインターネットFAXへの移行に柔軟に対応していく。その先でインターネットFAXならではの利点として、紙文書データのユビキタス化や情報セキュリティの向上など、新たな付加価値を享受する。そういったロードマップが浮かび上がって来るだろう。もはや厳しい経済環境において、現状を維持したまま経費削減効果が得られる可能性があるFAXに手をつけない手はない。どのくらいの効果があるのか、まずは調査してみてはいかがだろうか。