熱狂する中国のネットビジネス市場と厳しい現実
動画共有サイトの優酷網(Youku.com)、SNSの人人網(Renren.com)、ECサイトの当当網(Dangdang.com)、インターネットセキュリティ会社の奇虎360(Qihu)・・・。いま中国のネット関連企業の米国上場ラッシュが続いている。
こうした熱狂ぶりを、かつて米国や日本が体験したバブルと指摘する声も多い。しかし、中国ネット企業に多額のマネーが集まる背景には、人口13億人の市場においてインターネットが着々と普及し、経済発展とも相まって、ネットビジネス市場が急速に成長しているという事実がある。
隣国の巨大市場の成長を取り込もうと、日本企業の参入も活発化してきた。しかし、中国市場には、政府による外資規制や検閲、地場企業間の熾烈な低価格競争、著作権侵害の横行、未成熟なビジネスインフラなど、険しいハードルがいくつも存在する。「中国市場は儲からない」。こんな声も聞こえてくる。
メディア等で伝えられる中国市場の熱狂と、漏れ伝わってくる厳しい現実。これらが混在した状況の中で、市場の有望性や自社の参入是非を判断しかねている企業も多いのではないだろうか。
本コラムでは、中国IT市場の基礎知識や最新トレンド、さらには市場参入のための成功のヒントをレポートしていきたい。まず第1回となる今回は、いま中国で人気を集めているネットサービスの動向を紹介していく。
まだまだ伸びる中国ネット人口
中国インターネット情報センター(CNNIC:China Internet Network Information Center)が発表している最新の統計「第27次中国互联网络发展状况统计报告」によると、2010年末のインターネット人口は4億5,000万人、モバイルインターネット人口は3億人を越えている。どちらも日本の約5倍の規模に達している。2009年からの1年間でインターネット人口、モバイルインターネット人口共に約7,000万人の増加となっている(表1)。
ここで都市別のインターネット普及率を見てみると、上海、北京、深圳・広州等の大都市における普及率は4割程度まで達している。しかし、その他の都市の普及率は2割程度であり、インターネットが広く一般に普及しているとは言いがたい状況にある。逆に言えば、伸びしろが大きいということであり、このことは依然として中国ネットビジネスの成長余地が高いことを示している。
インターネットの普及が進む中、中国においても多様なネットサービスが次々と出現し、中には莫大な数のユーザーを集めるサービスも現れている。
以下、特に大きな盛り上がりを見せている4つのサービスを取り上げ、それぞれの市場トレンドを見ていこう。
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