「ビジネスモデル・ジェネレーション」とは?
近年、誰もが実感しているように、業界を一変するような革新的なビジネスモデルが次々と登場している。iPodやiTunesによって新たにオンライン音楽市場を創り上げたApple、圧倒的な技術力とスピードでネット検索・広告ビジネスを確立したGoogleなど、その例は枚挙にいとまがない。しかし従来の常識や固定概念から脱却し、新しいビジネスモデルを創り出すことは、特別な人間だけに許されたことなのだろうか。
いや、新しいビジネスモデルを生み出す「ビジネスモデルイノベーション」は一見難しく見えるが、真摯な情熱があれば、誰でも実現できると私は考えている。ただし、小さな誤解や思い込みが邪魔をしていることが多い。たとえば、経営やマーケティング、製造などの専門分野に関わる人間は、ビジネスモデルを考える言語も重視するポイントもそれぞれに偏りがちだ。協力して補完し合おうにも、お互いの意図を正しく理解して全体像を共有することが非常に難しい。
そこで先入観を排して新しいビジネスモデルを作り出し、チームで共有するために有効と思われる手法として、『ビジネスモデル・ジェネレーション』の考え方、およびメソッドやツールを紹介したい。本著は45カ国470人の共著者が28459枚ものポストイットを使って累計4000時間、足掛け9年間にわたり、様々なプロトタイプを分析し、ビジネスモデルイノベーションの手法を体系化したものだ。様々な立場の人間の叡智が詰まっており、汎用性の高いものだと言ってもいいだろう。
「ビジネスモデルキャンバス」で共通言語を持つ
ビジネスモデルイノベーションを実現するために、まず第一に行うべきこと。それは目指すべきビジネスモデルについて共通言語を持つことである。 しかし、前述したように異なる立場の人間が全体像を共有するのは容易ではない。例えば、私は広告代理店出身なので、常にマーケティング的な「顧客視点」から考える傾向がある。製造業のエンジニアなら「製品や技術」からの視点に偏るだろうし、コンサルタントなら「収益」を重視しがちだ。そうなると議論がかみ合わないのは当然のことだ。
そうした問題を解決してくれるのが『ビジネスモデルキャンバス』である(図1)。ビジネスモデルキャンバスは「顧客」「価値提案」「インフラ」「資金」の4つの領域をカバーする9つの構築ブロックで構成されている。この活用によって偏りなく客観的かつ効率的にビジネスモデルを考えられるようになり、「彼は収益の流れを意識しているな」というように他の人の考え方を理解するのにも役に立つ。つまり、異なる言語と価値観を持つ人々が互いを理解し、ビジネスモデルを共有することが可能になるのだ。
そしてもう1つ、ビジネスモデルを客観的に比較する指標としても役に立つ。たとえば、多くの書籍で様々なビジネスモデルの成功例が紹介されている。無料で何かを提供し、レフィルや追加課金で利益を出すケータイのゲームコンテンツなどの「フリーモデル」、ASPなどを一定期間シェアして課金するASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)などの「シェアモデル」など、その斬新さに驚きと関心を持った人は多いだろう。しかし、そうしたビジネス書では解説されるのは1種類のパターンに留まることが多い。一方、『ビジネスモデル・ジェネレーション』では、あらゆるパターンのモデルを同じ『ビジネスモデルキャンバス』で表現し、客観的に比較することが可能だ。自社のビジネスモデルを検討する場面でも、様々なパターンでモデルを考え、その上で客観的に比較検討できる。
そして何より、全体像を直感的に理解できるという効用は大きい。『ビジネスモデルキャンバス』は、まず真ん中にVP(Value Proposition)=価値提案を置いている。これが社会に提供する価値となり、右側は顧客視点に基づいた「右脳的感情」で価値を考えるエリア、左側は「左脳的ロジック」で効率を考えるエリアに分けられる。その左右のバランスやブロックの関係性などから、1枚のシートでビジネスモデルの全体像を直感的に把握できるというわけだ。
日 時 : 2012年7月28日(土) 10:00~19:00 (9:30受付開始)
会 場 : デジタルハリウッド大学院 秋葉原メインキャンバス
参加料 : 39,900円(税込)*テキスト代、ワークショップツール、懇親会費含む