相次ぐ料金改定によりRDBMS市場に変化の兆しが
調査会社が公表している国内RDBMSベンダー別マーケット・シェアを見ると、日本オラクルが約半分を占めており、圧倒的なシェアを持っていることが分かる。ただ最近、Oracleユーザーの一部、特に経営層に他の選択肢を求める「Oracle離れ」の兆候も出ている。その背景にあるのが、ソフトウェア料金改定の動きだ。
まず2010年12月、Itanium版のOracle Databaseなどのライセンス料金を計算する際に使う係数が0.5から1.0に変更された。さらに2011年11月以降から保守サポート契約を更新する際、更新前の年額料金に「更新時調整料金」が上乗せされることになった。日本での2011年11月から2012年の調整率は2%だが、国ごとの調整率は米オラクル社が決めるため、以後も2%以内とは限らない状況だ。
同様な料金改定の動きはアイ・ビー・エム、SAP、マイクロソフトなどにも見られ、その背景には年々複雑化するシステムにおけるサポート水準の維持、新製品の開発費の確保などが挙げられている。ただ多くのユーザー企業におけるIT予算は限られており、既存システムの維持費が年々上昇する状況は受け入れがたい。
では、Oracle以外の選択肢は何か。コスト優先で考えれば、PostgreSQLなどのOSSということになるが、Oracleで動いているような重要なシステムのDB移行においてはやはりハードルが高い。そこで商用RDBMSの中から、コスト、基幹システムでも適用可能な信頼性、実績の観点で検討すると、あげられることが多いのが日立製作所のHiRDBと日本アイ・ビー・エムのDB2だろう。標準価格で見てみると、例えばOracle EE (Enterprise Edition)をHiRDBに移行すると、ライセンスコストを約3分の1に削減することができる。
DBエンジニアにもっとも支持されている「SI Object Browser」がHiRDBに対応
日立製作所の石川氏は「HiRDBは1994年に発売した製品で、主にメインフレームで動いていたシステムのオープン化に貢献してきた。このため信頼性と拡張性には定評があり、公共社会、金融、通信、産業流通などの各分野における重要なシステムで実績がある。」と語る。
実際に、日立の技術サポート力は高い評価を得ており、「日経コンピュータ(2012年2月2日号)第14回パートナー満足度調査データベースソフト部門」で第1位を獲得している。
ただ、HiRDBがコストと技術サポート力で魅力があるDBMSとは言え、これまでOracleやSQL Serverを中心にITシステムを構築してきた企業からは、「設計、開発、チューニング、運用、保守のフェーズで直感的に使えるツールが必要だ」という言葉を聞くことが多い。そのDBエンジニアがもっとも支持している開発支援ツールが、システムインテグレータ社の「SI Object Browser」シリーズだ。
そして今回、これらエンジニアからの要求を受け、遂に「SI Object Browser」シリーズがHiRDBに対応した。
システムインテグレータの鈴木敏秀氏は「最近SI Object BrowserのDB2版やSQL Server版の売り上げが伸びている。より手を広げていかなければ、と考えていたときにHiRDBユーザーからの要求が高まった」とHiRDB対応への期待を語る。
石川氏は「HiRDBにもGUIツール群が用意されているが、これらのツールに加え、SI Object Browserを使うメリットは大きい。ER図を作成する設計工程の上流から、SQLをテストしたりチューニングしたりする下流工程まで、OracleやSQL Server、DB2版と同じユーザビリティで操作することができる。複数のDBMSを使いこなすエンジニアにとっては、SI Object Browserを使うことによって、HiRDBでのアプリケーション開発生産性を高められると期待している」と語る。
SI Object Browser for HiRDB導入がもたらすメリット
今回新たに開発された「SI Object Browser for HiRDB」が担うフェーズは開発・チューニング・運用であり、HiRDBにも対応した「SI Object Browser ER」は設計・保守フェーズを強力に支援する。
ではHiRDBにおける開発に「SI Object Browser for HiRDB」を導入するメリットは何か。システムインテグレータ社の後迫潤氏が挙げるポイントは、軽快な動作、ユーザビリティ、数多くのオリジナル機能の3つだ。
まず動作が非常に軽快で、例えば起動してから1万件のレコードを持つテーブルデータを表示するまでの時間は、他社ツールの10分の1以下だ。またテーブル一覧からのコピー&ペーストでテーブルを複製するといった直感的な操作や、よく利用する接続ユーザーやテーブルを登録することで、再実行を可能にするショートカット機能など、ユーザビリティを徹底的に意識したインタフェースに対する評価が高い。
数あるオリジナルの機能の中で、特に開発者に重宝されているのがテストデータ生成機能だ。作成するデータ件数と連番、固定、ランダムなどの値情報を設定するだけで、人名など日本のデータベースのテストに最適な大量データが一発で作成される。
開発・チューニング・運用フェーズを強力にサポート
搭載されている開発者向けの機能は豊富で、それはオブジェクト管理、SQL作成・実行、ストアドプログラム、パフォーマンスチューニング、データベースのバックアップ・移行などで有用だ。
まずオブジェクト管理に役立つ機能として、オブジェクトリストからショートカットキーで、オブジェクトのコピーを作成可能にする機能がある。テーブルの場合は、レコードもコピーするか指定できる。
SQL作成に役立つのが開発ツールでは必須の、コード入力に応じてキーワード、オブジェクト一覧、テーブルの列一覧などを表示するコード補完機能だ。入力したコードのフォーマットルールは変更可能となっている。
SQL実行に役立つのが、マルチSQL機能。それぞれのSQLをセミコロンで区切ることで、複数のSQLを同時に実行可能で、SELECT結果は複数シートに表示される。ストアドプログラム開発に有用なのがコメントチェック機能で、プログラムからコメント行だけを抜き出して一覧表示できる。複数プログラムの一括実行、コメントからソース内の該当行へのジャンプも可能だ。
データベースエンジニアの関心が高い、パフォーマンスチューニングに役立つ機能としてはまず、セッション/データベーストレースを行い、ボトルネックとなるSQLを特定する「SQLキャッチ」の機能がある。また実行計画(アクセスプラン)表示機能により、SQL内部のアクセスパスと、コストを確認できる。さらに、現在作成されているインデックスの使用状況と、ルールベースの分析により最適と思われるインデックス候補を判断して表示する「インデックスアドバイザ」の機能も評価が高い。
主要RDBMSに一つの製品で対応した設計・保守ツール
設計・保守フェーズを強力に支援するのが「SI Object Browser ER」(OBER)になる。この製品は一つでOracle、SQL Server、PostgreSQL、MySQL、DB2、HiRDB に対応している。その基礎となるデータモデリングの手法ER図はE(エンティティ)、R(リレーションシップ)でデータ構造を表現するデータベース設計における一つの定番となっている。エンティティ=テーブルと考えれば、理解しやすいだろう。
後迫潤氏は「OBERの最大の特徴はRDBMSに接続し、ER図のフォワード、リバース、同期ができることにある」と語る。フォワードエンジニアリングによりOBERからデータベースにテーブルを作成し、リバースエンジニアリングによりデータベースからOBER上にER図を作成する。さらにデータベースとER図の相違点を調べ、自動で同期させることができる。
具体的な使い方だが、まずデータベースの設計では、OBERでER図を作成する。専用ツールなので、VisioやExcelなどより、マウスではるかに効率よくER図を作成することができる。そのER図をHiRDBなどの対応RDBMSにフォワード(テーブル作成)する。その後の仕様変更はOBER「データベース同期」機能で反映すればいい。
一方メンテナンスでは、既存のRDBMSからER図をリバース生成し、DB設計書を出力する機能が有用だ。リバース後、そのER図からメンテナンスができるようになる。例えばドキュメントが残っていないDBを引き継いだ場合でも、ER図を起こし、設計書も出せる。
そのほか、OBERには主要な設計ドキュメントの自動生成や、データサイズの自動見積、大規模DB設計を効率化するサブモデル分割など数多くの便利な機能が搭載されている。また、大規模DB設計でありがちなのが、名前の揺らぎだ。例えば商品コードが、別のエンティティでは商品ナンバーになっている、データ型の桁数が違うなど。そうした不整合が起き得ると思うが、OBERでは、それを防ぐ機能としてドメインという機能が付いている。ドメインは属性名、データ型のディクショナリであり、データベース設計においてドメインを割り当てることによりデータ型の揺らぎから解放される。仕様の変更があった場合、ドメインに適用すれば、参照しているエンティティの全てが同期する。
使い慣れたツールによりHiRDBへの移行のハードルが下がる
さらに注目したいのが、OBERのリバース、フォワード機能が、DB移行に有用だということだ。たとえば既存のOracleのRDBMSからリバース機能でER図を作成する。ツールメニューの「データ型一括変換」でデータ型を例えばHiRDB用に変換。フォワード機能でHiRDBにテーブルを生成すれば、OracleからHiRDBのDB移行が完了する。もちろん、変換不能なOracle独自の関数などもあるので、その部分は変換設定のカスタマイズにより対応する。
今回、「SI Object Browser」がHiRDBに対応したことに対する反響は大きく、関連セミナーなども盛況だ。なぜなら、ソフトウェアの料金改定で、ユーザー企業の経営層は、他のDBMSの選択肢を検討し始めている。一方で他のDBMSを使うように言われる現場のSEは混乱する。そこにユーザインタフェースをOracleとHiRDBで共通化できるObject Browserが使えるのであれば、現場の混乱も一気に解消できるからだ。
ただし、ユーザインタフェースの共通化だけで混乱を解消できるわけではない。例えばOracleのデータベースアプリケーション開発で広く利用されているPL/SQLなど、特定のDBMSに依存したユーザープログラムの移行が問題になる。この問題に対しては、ハイ・アベイラビリティ・システムズ社のDB移行ツール「SQL Ways」がHiRDBへの対応を表明するなど、アプリケーションインタフェースを共通化する動きも高まりつつある。2012年11月にリリースされる「SQL Ways」で、PL/SQLで書かれたソースコードを、ほぼ自動変換できるようになる。もはやアプリケーションのDBMS依存度も、かなり低くなっているといえる。
料金改定によるDB再考の動きがあるとはいえ、ミッドレンジ以下の情報系システムを中心にその果たす役割は不変だろう。ただ、ハイエンドの基幹系、勘定系はHiRDBなど、使い分けが進展していくと思われる。
システムインテグレータの鈴木氏は「日立のグループ力と顧客層には、現在のRDBMSにおけるシェアの数字以上の可能性を感じている」とSI Object BrowserのHiRDB対応への期待を語る。