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【夏サミ レポート】モバイルを軸に『すべてを再発明』―開発者はどこまでやれるのか


去る7月27日に行われた「夏サミ」こと、翔泳社主催のDevelopers[Social Enterprise]Summit 2012。本稿では、アイキューブドシステムズ 取締役品質管理本部長/CQO 兼 取締役社長室長の畑中洋亮氏による「モバイルを軸に『すべてを再発明』ー開発者はどこまでやれるのかー」の様子をお届けする。

 学生時代にはスーパーコンピュータを使ってヒトゲノムの解析を行っていたという畑中氏。研究を続けていく中で、悶々とすることがあった。それは、「デジタル化が目的になっていないか、WhatがなくてHowばかりになっていないか」ということ。そこで研究の辞め、デジタルとアナログの交差点は感性が大事と考える。就職先として選んだのは、Appleだった。

 転職したのは、ちょうどiPhoneが日本に登場したころ。それが「ITの世界をがらりと変えた」と畑中氏。ITを持ち歩くことができるようになり、これが短時間で物事をこなすことにつながる。つまり、時間に対する考え方が変わったのだ。そして、モバイル端末という限られた装置の中では複雑性はNGであり、結果、ITを利用する目的が明確化したとのこと。

 「単純だから子どもやお年寄りでも使えるものになりました。目的がはっきりしているので誰でも使えるようになったのです」(畑中)

 もう1つの変化が、スマートフォンの普及でITが膨大な数の人に行き渡った現実だ。これはまさに、数の力。このことにいち早く気付いたのがGoogleのエリック・シュミット氏とSalesforce.comのマーク・ベニオフ氏だと畑中氏は言う。彼らは、この数の力が生まれたことを前提としてサービスを作ることを考えている人たち。そして、この「数」の部分は、「ITの得意な人たちではない人の数」という現実を理解しておくべきだと畑中氏は指摘する。

 Appleで仕事をしばらく続けた後、畑中氏はiPhoneの普及を手がけていた際に知り合った九州のベンチャー会社アイキューブドシステムズに転職する。ここは、2008年当初からiPhoneアプリケーションの開発を行っていた会社。現在もモバイルアプリケーションの開発に特化したビジネスを行っており、規模は60名ほど。それが、今年中には100名を越えるという成長過程にある。

 同社が手がけているアプリケーション事例でもっとも有名なのが、中古車の買い取りと販売を手がけるガリバーインターナショナルのiPadアプリケーションだ。最初は中古車の出張査定のアプリケーションをiPad用に開発した。それが現在では機能ごとのアプリケーションが15個ほどになっている。畑中氏によれば、同社が顧客に評価されたポイントは、最初の中古車査定のアプリケーションをとにかく迅速に構築したことだという。

 この迅速に開発することは、同社のアプリケーション構築の基本姿勢であり、それは現在も継続されている。

 「バグの修正だけでなく、顧客のこうしたいという要望も含め迅速に開発しています。速く出すことで顧客の現場との一体感が出てきます」(畑中氏)

 この迅速さを維持するために、独自のフレームワークを構築することになる。そして、テストを十分に実施しない段階からアプリケーションを出すこともあるとか。なので、現場でバグ出しをしてもらっている状態だ。そのようなことになっても、速く出すのが鍵になる。

 「ビジネスの現場で何が起こっているかは、開発者には分かりません。それをいかに早く吸収しアプリケーションに反映させられるか。モバイルアプリケーションの開発は、試行錯誤の繰り返しです」(畑中氏)

 この試行錯誤の繰り返しを行いながら、とにかく迅速にアプリケーションを構築する。これは、まずは要件定義をしてから、というような開発者には理解できるものではない。要件定義をと言い出す人が、気付かないくらい迅速にアプリケーションを構築する。この速さが必要だのこと。

 もう1つ畑中氏が指摘したのが、たんに業務をiPad上にアプリケーション化し現場でその業務が行えるようになるだけではダメだということ。今のモバイルアプリケーションには「インターネットとコミュニケーションがなければなりません」と言う。

 モバイルワーキングができるようになり、現場にいない人とのコミュニケーションが必要になる。コミュニケーションをとる手段には言葉、文字、表情、身振り、絵画、写真、音楽、歌、機能、デザインなどさまざまなものがあり、それらを用いて「意味」のやり取りをする。このさまざまな方法のどれをどのように使えば、よりコミュニケーションがスムースになり業務がうまく行くのか。それを考えることが、これからのモバイルアプリケーションでは重要となる。

 「文字によって、遠くの人に物事を伝えられるようになりました。とはいえ、メールでそれがすべてスムースに行くとは限りません」(畑中氏)

 これまでのITは、分かっているプロセスを高速化するためのものだった。これからのITは、今どこで何が起こっているかを分かるようにするものだとのこと。それを実現する中で、判断の高速化が行われ、意志決定の機会が増す。これからのITは、人間の理解を助けるようなものでなければならないと畑中氏。そのためには、ソーシャルネットワークという共通の場で会話し、経緯を伝えることが重要になると語る。

 「新しい時代が始まっています。開発者の人は、是非一緒に挑戦して欲しい」と、畑中氏は会場の参加者に呼びかけた。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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